黒ひげ時々らぐな日和

あれから3年…ラグナロクオンラインは進化していた! RO復帰を果たした黒ひげの活躍に期待!  「キャラもアイテムも全て消えていたが、成り上がってやるぜェ!」

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2010-02-25 [ Thu ]
すごく長かった……


けど、なかなかおもしろかったですね。
こんにちは、黒ひげです。




サインクエスト、みなさんに手伝っていただき、無事終了する事ができました。ありがとうございます!詳しくはひげらじでアップしようと思います。


↓before
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↓after
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これで重量地獄から解放されたぜ…!
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2010-02-20 [ Sat ]
チッチキチー、どうも黒ひげです。眠いので簡単に…


昨日はせんせいとねーさんが音頭を取ってETに行きました。5人で遊び感覚で行ったんですが……





アチャスケc!



ペノメナc!



月光剣!


とスーパーホクホク狩りになりました!
あざすあざす!

↓動画
2010-02-18 [ Thu ]
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やったよ!96になったよ!
いや実に長かった…この先も頑張りますよォ!


●たまり場にて
アケチ君が狩りメンバーを探してたので参加。俺と海賊さんの3人が集合。プチギルハンに。そして、海賊さんのパラの職位がうんちょコレクターだったのがきっかけで……

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お前…


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海賊さん若干引いてるぞ!



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すまねェ…レーリン、ナスマグ。たまり場を預かっておきながら、アケチ君の暴走を止める事ができなかった……彼によってたまり場は汚されてしまった……

暴走は止まらない…!と、思った矢先、ギンさんが登場。俺には遠く及ばないが、かなりの紳士だ。きっとガツンと言ってくれるに違いねェ。



















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アンタもかよっ!

もういいよ、DSの紳士は俺一人という事で。@サイガ兄さんか。復帰期待してますよう。


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わかってるじゃないか。そして、このSSをニヤニヤしながら撮ってしまう俺も、ただの変態なのであった。



というわけで、動画載せときます。かなり面白かったんで!
2010-02-17 [ Wed ]
ひげひげ


ひげらじはじまるよー!


●おたより募集
おたよりは
kurohigechan@hotmail.co.jp
まで。

おたよりじゃなくても、感想とか、リクエスト(何でも)とか、こんなコーナーがあったらイインジャナイとか、黒ひげさん愛してますとか黒ひげさん好きですとか、そういうのでも全然OK。ペンネームは入れてNE!
それと、Sara鯖にいるので、直接wisとかしてくれてもかまわないし、ブログのコメントにのせてもOK!



☆menu☆
・最近のひげ@ROとリアル
・本の紹介
movie:なし
Background music:アイリッシュバンド SEENAより

狩り中のBGM程度にどうぞ。


第九回ひげらじ

zoomeに移行しました!
2010-02-15 [ Mon ]
Ragnarok Memories ~遥かなるリコリスの旅~     


第二章:静寂のフェイヨン編

3.~指南する者~

「ワォ、あなた方もリコリスの旅を遂行する巡礼者様でアルネ?!」

大きな大きな家の中で、ひげをたらふく蓄えた、キョンシーのような服を着ている男がたいそう興奮気味にそう言った。なぜか頭にはリンゴを乗せていた。

 朝日が昇った後、マグナスたちは宿屋を後にして町長の家にやってきたのである。最初、こんな若い男女三人だったので全く信用してもらえなかったが、ノブナガからもらった巡礼者公認書印のついた肩布を見せるやいなや、ころっと態度を変え町長の部屋まで丁重に連れて行かれた。町長は5,60歳ぐらいだろうが、体の引き締まり具合といい、かなり若く見えた。

「あの……それでフェイヨンにある聖地へ入る許可をもらいにきたのですが。」

レーリンが丁寧な言葉遣いで町長に話しかける。町長はにっこりして首を縦に振った。

「もちろんアルネ。それに、フェイヨン一の弓遣いもお供させてみなさんをお守りサセルネ。」

そう町長が言うと、村長の隣にいた白いフェイヨンの伝統衣装を着た男がぱっと的のようなものを出した。しかし、何も起こらなかった。

「…?」

マグナスたちは不思議そうに町長の次の言葉を待っていた。町長の顔が見る見る赤くなっていく。そして、はち切れた風船のように、急に怒鳴った。

「ハルニャンンッ!!何してるアルカ!!これで何回目だと思ってるアル?!チン(私)が『お守りサセルネ』って言ったら、素早くフォンツォーの持ってる的に向かってダブルストレイフィングを打てと、何度言ったらわかるアルネ!!」

しかし、それでもハルニャンと呼ばれた弓遣いは現れない。業を煮やした町長は静かに隣のフォンツォーにハルを探しに行くように指示した。

「あの小娘が……」

そう小さな声で悪態をついた後、ぱっと明るい顔に戻り、マグナスたちに向き直った。

「アイヤー、我が町伝統の迎え入れ方を失敗しただけアルヨ。ま、隣の部屋でお茶でも飲んで待ってるヨロシー。」


 そういうわけで、隣の部屋に行き、お茶を一杯ご馳走になった。しかし、それでもハルニャンを探しに行ったフォンツォーは帰って来ず、さらに一杯…そしてフェイヨン特色の和菓子をいっぱい個ご馳走になることになった。その間に町長は時間をもたせるため、フェイヨンの昔話などを必死に説明していた。マグナスとレーリンは真剣に聞いていたが、ロンはあまり興味を示さずに、茶菓子ばかりを食べていた。


 そうしているうちに2,3時間が経過し、いつの間にかお昼時を迎えていた。町長の街自慢もそろそろネタが尽きてくる。

「あとデスネー……フェイヨンには昔ボンコンという少年とムナックという少女がおりまして……」

「あ、町長さん、その話はさっき聞きましたよー。」

レーリンはできるだけ気分を害さないようにニコニコしながら町長に教える。しかし、町長は真剣に考える顔をしてその場で黙り込んでしまった。と、その時……

「ダブルストレイフィーング!!」

突然部屋に掛け声がこだまし、その瞬間2本の矢がすさまじい勢いで町長の頭のリンゴに命中した。一本は貫通し、もう一本はリンゴにそのまま突き刺さっている。あまりに急な出来事に心臓が飛び出る思いだっただろう町長は、両手を高く上に上げ、目と口をあんぐり開けたまま固まってしまった。びっくりしたマグナスたちであったが、部屋の入り口で弓を構えているタレ目で銀色の色の長髪の少女が目に入った。腕を黒い布で巻き、お腹はへそを出している。この人がおそらくハルニャンと呼ばれるフェイヨン一の弓遣いだろう。と、その後ろからフォンツォーがダッシュで現れ、固まっている町長を見つけると、猛ダッシュで町長の傍に近寄り、元に戻させようと背中をバシバシと叩いた。

「町長!しっかりスル!しっかりスル!大事なお客様の前!しっかりスル!」

町長はその言葉に最初は無反応であったが、はっとなって硬直から解放された。

「し…死ぬかと思ったアル……」

「町長さん、ごめんなさぁい~。遅れましたぁ。」

とろけた声で弓遣いがそう言うと、再び町長ははっとなった。矢が刺さったままの頭のリンゴを撫でながら、強い口調で彼女に詰め寄る。

「ハルニャン!どこで何をしてたアル?!」

その剣幕にも、ハルニャンは全く動揺せずに町長ににっこりと微笑んだ。

「街の茶菓子屋さんが新作のおまんじゅうを販売し始めたから、食べてましたぁ~。」

「貴様……」

その言葉で怒りが頂点に達した町長。噴火する火山を見守るようにその場の彼女以外全員がゴクリと唾を飲んだ。――しかし……

「あ、きちんと町長さんの分も買ってきましたよぉ~。」

言ってハルニャンはごそごそと腰にぶら下がっているポーチから饅頭の入った袋を町長の前に出した。町長はもう、何と言っていいかわからず、そのまま何秒か硬直していたが、やがて何を言っても無駄と諦めたように静かにその袋を受け取った。

「ありがとうアル……」

先ほどの剣幕はどこにもない。ただ、無気力にそうポツリと漏らしただけだ。それでも、ハルニャンは先ほどと変わらずニコニコしている。

「いいえ~。あ、それとそのおまんじゅうは~、黄ハーブのお茶と一緒に食べると消化もいいらしいですよ~。」

「ああ、後で試してみるアルヨ……」

饅頭の袋を無気力に見つめ、町長は自嘲気味に笑った。

「フォンツォー、チンは部屋でこの饅頭を食べるアルから、お客様の事は任せたアルヨ。」

そう言うと、ゆっくり歩いてその場から消えていく町長。矢の刺さったリンゴが妙に悲しく見える――。しばらくは全員があっけに取られたまま動けなかった。

「あ、みなさんが今度聖域に入るリコリスの旅ご一行様ですか~?」

その中でハルニャンが愉快に話を切り出した。

「あ、そうです。あなたは……」

レーリンはぎこちない笑顔で尋ねた。

「わたしは~、この町で一番の弓遣いとして~、リコリスの旅ご一行様を指南するハルニャンっていいま~す。」

えっへんといった感じで自慢げにハルニャンが、大層な肩書きを述べたが、さきほどの言動などを見る限りではとても信じられない。

「よろしく~。」

そんな事はお構いなしにレーリン、マグナス、ロンに強引に握手を求めた。三人は何とも言えない感情を抱きながらもその手に答えた。

「よ、よろしく。」

その時、マグナスは思った。

(騒がしくなりそうだな……)

きっと2人も思ったに違いない。

――その後フォンツォーが三人を待たせて、三十分ほどハルニャンに説教をした。だが、その甲斐もなく、オワゾーネはわかっているのかわかっていないのか (おそらく後者)返事をただ繰り返すのみであった。フォンツォーもだんだん町長のように無気力になり、見送りに町長の家から出てくるときには、完全に顔が逝っていた。

「まぁ、ハルニャンは力量だけは確かアルから、安心するヨロシ。」

家の前でフォンツォーも自嘲気味な笑みをこぼしながら無気力にそう言った。それを聞いたハルニャンは褒められたと思って顔を赤くする。

「んもー、フォンツォーさんったら~。変なプレッシャー掛けないでくださいよ~。」

「じゃ、じゃぁハルニャンさんをお借りしますねー。」

レーリンがそう言うと、3人は振り返り別れを惜しむハルニャンを強引に連れて、早歩きでフィヨンの洞窟に向かった――。



五節:~最初の試練・月夜花~


「おーい、ハルニャン。本当にこっちで合ってたのか?」

 フェイヨンの街を北に抜けたところにフェイヨンの洞窟があり、一行はその中に入っていった。中はひんやりとしているが、高山地帯であるのも助けて、湿度はあまりないようである。洞窟の壁は不気味なほど黒く、炭素を多く含んでいる事がわかった。また、壁にはランタンが所々に掛けてあり、巡礼者たちが道に迷わないように工夫されている――はずなのだが…

 ずいぶん前、何の問題もなく洞窟の地下3階にたどり着いた一行であったが、その後、狭い道を進んでいると二手に分かれる人道があった。片方はランタンが掛けられている道であり、もう片方には永遠の闇が続いていた。普通に考えればランタンの道を行くはずなのだが、ハルニャンは「こっちが近道!」と言って暗い方の道へと進んでいった。しかし、かなり進むと、足場も全く変わってきて、人間が通るには少々酷な凸凹道になってきた。しかし、ハルニャンは何の不安の色も顔に出さずに、真っ暗な方向へとひた走っていった。すでに1時間以上歩いている。それで、業を煮やしたロンが、闇の中そう尋ねたわけである。

「あってますよ~。たぶん。」

彼女はそう言いながら暗闇の中なのにも関わらず器用に凸凹した道を歩いていった。それにしても、最後の「たぶん。」が気になる。

「案内する気あんのか……」

マグナスが悪態をつくのも無理はない。しかし、彼女には聞こえていなかった。というか、完全に聞いていない。

「っきゃ!」

とその時、マグナスの後方からレーリンの叫び声がした。どうやら足を挫いたらしい。すぐに三人は引き返し、ルナの近くに寄った。無論暗闇の中で。

「大丈夫か?」

ロンが心配そうにレーリンの顔を覗き込む。

「大丈夫大丈夫。ちょっと挫いただけだから。」

「ちょっと見せて~。」

ハルニャンはマッチと火打石を取り出し、火をつけた。ぽわーっと淡い炎の光と共に全員の顔が照らし出される。マグナスたちは久しぶりに見る生の顔に懐かしささえ覚えた。レーリンは必死に笑っていた。どう見ても痛みを我慢している。しかし、その炎えてしまった。再び辺りは再び濃い闇に包まれる。

「大丈夫よ。っさ!行きましょ!」

無理に立ち上がろうとするレーリン。しかし、ハルニャンは彼女の足首をがっちりと押さえて放さなかった。

「動かないで!」

ただ一言、さっきまでの彼女とは明らかに違う強い口調でそう言った。ロンとマグナスはびっくりした。レーリンも驚いていた。

「わたしのポーチの中に包帯がある。それで固定しよう。」

彼女は手際よく包帯を取り出してレーリンの足首に巻きつけた。暗闇の中で行われたその作業は神業と言っても過言ではないだろう。

「さぁ、これでいいわ。」

押さえつけていた手をどかされると、レーリンはゆっくりと立ち上がってちょっと歩いてみた。多少の拘束感はあるものの、何もしていない時と比べてかなり楽だった。

「ありがとう、ハルニャン。」

彼女は暗闇の中、満面の笑みで礼を述べた。

「いいえ~、いいんですよ~。」

すると、いつのまにかオワゾーネの口調が元に戻っていた。

「さぁ、先を急ぎましょ~。」

彼女はそう言って再び先頭を歩き出した。

「女ってのはよくわからねぇよな。」

ロンがマグナスの耳元で囁く。彼も深く頷いた。


 ――そうしてしばらく歩いていると、奥に淡い青色の光が見えた。四人は急いでそこへ行くとそこは出口で、開けた空間になっていた。どうやらハルニャンの言っていた方向は近道がどうかは別として正しかったようである。開けた洞窟の壁にはいくつもの青い光を放つランタンが掛けられており、奥のちょっと岩が高くなっているところには、神社のような装飾が施してあった。そして、そこには小さな黄色い狐がマグナスたちを見つめるように腰を落として座っていた。

「狐……?」

四人は警戒しながらそっと傍に寄っていった。すると、その小高い場所の麓あたりまで来たときに、狐が「コーン。」と一言鳴くと、マグナスたちの前に、少し大きな狐が現れた。急に現れたので彼らは驚いて2,3歩後退した。

「な、なんだよ、こいつ?!」

マグナスが叫ぶと、その狐は冷ややかな視線を彼に投げかけた。それを見たロンがマグナスの口を押える。

「おい!精霊様の前だぞ!!失礼な事言うな!!」

その狐は最初、何かを詮索するような目をしていたが、やがて話し始めた。

「あなたたちはリコリスの旅を遂行する者ですか?」

冷たい視線とは裏腹に優しい声をしている。それにちょっと安心したレーリンはこくりと頷いた。

「はい。初の巡礼です。あなたはフェイヨンの精霊・月夜花(ウォルヤファ)様ですか?」

「そうよ。私の名は月夜花。静寂を守る月の使者。もしも私の力が必要ならば、私にその意思を見せなさい。」

そう言うと、途端にその狐は丸くなり、そして人の形へ変化した。頭を狐の被り物のようなモノで覆っている少女になった。右手には、鐘のついた黄金のステッキを持っている。彼女はフワフワと浮き始めた。

「意思を見せるって……まさか?」

マグナスが足をすくませながらロンに聞いた。ロンが説明しようとした時、月夜花のいた方向から針のようなモノが飛んできた。それがニケの左頬を掠めた。

「まぁ、こういう事だな。」

ロンは頬の血を拭うとジャンプし、月夜花の近くまで一気に距離を縮めた。そして、右手を大きく振りかぶり、素早く突き出した。

「鉄拳!!」

しかし、素早い月夜花の動きでかわされ、それは無常にも空を撃つ。それどころか彼女はロンの後ろをとっていた。そして、目を閉じ、何かの呪文を唱え始めた。

「ライトニングボルト!」

月夜花の手から閃光が迸る――魔法だ。一対の雷はまるで生きているようにニケ目がけて直進する。

「おわあああああああ!」

感電したロンは悲痛な叫びと共に地面にたたきつけられた。

「ロン!」

レーリンが駆け寄ると、ニケの体がぴりぴりと痺れている事に気づいた。

「大丈夫?」

「ああ……それにしても……精霊様はやっぱつええな。」

「あなたたちの意思はそんなものですか?それに……」

月夜花はロンを見下ろした後、角でびくびく震えているマグナスに視線を移した。

「あなたはなぜそんなに怯えているのですか。」

月夜花がマグナスに突進していった。しかし、彼は恐怖のあまりその場で動く事さえできなかった。

「あなたみたいな中途半端な覚悟の者は、"リコリスの旅"を遂行する事などできません。」

彼女が持っていたステッキを振り上げた。ステッキの先が黄金に輝く。周囲の力を集約しているようだ。ロンが立ち上がるが間に合わない。しかし、その時……

「ダブルストレイフィーング!!」

ハルニャンの放った二本の矢がステッキを持っていた方の手をかすめた。一瞬不意を突かれた月夜花は避けきれなかったのだ。

「…っく!」

すぐに矢を持ち替えるハルニャン。月夜花はターゲットを彼女に変え、襲い掛かった。

「えい、えい!」

矢を撃ち続けるが、不意をつかなければ月夜花に当たらない。その間にも、月夜花はくるくると宙を舞い、華麗にハルニャンの矢を避けながら距離を縮めていった。

「っは!」

そして月夜花は完全に間合いに入り、ステッキを振り上げた。再び周囲の力を集約したステッキの先端が黄金に輝いた。先ほどよりも強く。

「わわわっ!」

ズゴーンッ!すさまじい轟音と共にステッキが地面をえぐる。ハルニャンはなんとか避けたようだ。しかし、えぐられた地面のかけらが辺りに飛び散ってハルニャンの手に当たり、彼女は弓を手放してしまった。月夜花は追撃をやめない。今度は空中に浮遊し目を閉じるとまた詠唱を始めた。

「ライトニングボルト!」

両手をハルニャンに向けると、再び閃光が迸る。彼女目がけて10本の雷の矢が襲い掛かった。彼女は倒れこんでしまった。逃げ場はない。すると!

「はあああ!」

何とさっきまで怯えていたマグナスがハルニャンをかばうように前に立ちはだかった。そして、腰に当てていた短剣・グラディウスを盾にするように構えた。次の瞬間、10本の雷はマグナスのグラディウスに直撃し、黒い煙を上げた。あたり一体が煙に包まれる。

「マグナス!ハルニャン!」

ロンとレーリンが叫ぶ。が、返事がない。しばらくの間、黒煙とパラパラという音だけが辺りを包み込んでいた。それをレーリン、ニケ、月夜花は静かに見ていた。とその時、煙の中から青い光が差した。それは辺りの煙をまるで力に変えるように吸い込み、一層強い光を放った。やがて二人の姿が確認できた。倒れこんでいるハルニャンと、その前でグラディウスを構えるマグナス。前と何も変わっていなかった。ただ一つ、グラディウスが青く強い光を放っていること以外は。

「え?」

マグナスは驚いてグラディウスを見つめた。と、急にグラディウスはカタカタと震えだした。そして、爆発したようにグラディウスの内部に溜まっていた力が放たれた。10本の雷が月夜花を捉えた。最初の数本は避けたが、10本すべてを避ける事はできず、彼女は雷の餌食となった。

「きゃああああああああああああああ!」

たまらず声を上げる月夜花。ぴりぴりと痙攣している。

「今だ、ハルニャン!」

ロンの言葉にはっとなったハルニャンは、弓を素早く拾い、二本の矢を射た。

「ダブルストレイフィングー!!」

月夜花にまっすぐ進んでいく矢。しかし、月夜花が手を翳すと不思議な事に2本の矢は月夜花の前で消えてしまった。

「?!」

「……もういいわ。」

しょぼしょぼと両手を上に上げ、降参のポーズをとる月夜花。

「あなたたちの勝ちよ。しかと、その意思を見せてもらいました。」

その言葉にレーリンたちの顔が安堵で包まれた。やったのだ。



6.~新たなる仲間~
 
「やっ……」

一気に気が抜けたせいか、ロンとハルニャンの体がガクリと傾く。しかし、依然マグナスだけは食い入るようにグラディウスを見つめていた。その様子を見て月夜花がマグナスに近寄った。

「まさか、スロットが生きていたなんてね。」

彼女は優しく微笑んだ。

「スロット?」

マグナスがはっとなって尋ねると、月夜花はびっくりしたような顔で彼を見た。

「あなた、これにスロットがついてるのを知ってて盾にしたんじゃないの?」

「いいや。俺はただハルニャンを守りたくて……だって、俺を助けてくれただろ?だから……強く思ったんだ。そしたら体が勝手に動いて……」

それを聞いたとき、一瞬だが月夜花ははっと声を上げた。

「まさか、王の意思が……」

それはあまりにも小さな声だったので、マグナスには一言を聞き取ることさえできなかった。

「なんだって?」

「……いいえ。何でもないわ。」

ごまかすようにくるりと回り、マグナスに背を向けてロンたちの方を向く。ロンの体はまだ痙攣していた。それをレーリンが抱えている。月夜花は二人に手を向けた。そして、何か再び呪文を唱えていた。

「ヒール!!」

その瞬間、月夜花の手が光り、ロンとレーリンを暖かい緑色の光が包み込んだ。二人はびっくりしたように上を見上げたが、やがてそれは消え、後にはあらゆる痛みが消えていた。

「す、すげぇ。これが『ヒール』。」

ロンが驚いて立ち上がり、どこも痛くないと腕をぐるぐるとまわした。月夜花は同じようにハルニャン、そしてマグナスにもヒールを施した。

「ありがとうございます。」

レーリンはペコリと彼女に頭を下げた。月夜花はにかんだ笑顔をしてくるりと宙を舞い、彼女は神社のようなところへ降り立つ。その様子を4人はごくりと唾を飲んで見守った。

「スロットは……」

不意に彼女が語り始めた。

「太古、オーディン様率いる神軍と、ロキ率いる巨人軍との戦い、ラグナロク大戦において、神々が人間に渡したとされる秘技。それは相手の技を受け止め、新たな能力を生み出す力。人間はこれによって、巨人の襲来を見事防ぎ、生き残った。」

「ラグナロク大戦?」

マグナスが尋ねると、月夜花は不思議そうな顔をしたが答えた。

「ラグナロク大戦とは、神と巨人の戦い。全ての封印の外れた日に起きた、巨大な戦争。封印されていた元神であるロキは自分の子である狼のフェンリル、地獄の番犬ガルムたち巨人種を引き連れて、神々に戦いを挑んだ。その時、神は人間が巨人に攻撃される事を予想した。」

ステッキをくるくると回す月夜花。

「その数年前まで、私たちの世界は巨人に支配されていた。しかし、とある一人の人間ジークフリードが神の住むアースガルズに助けを求めた。彼はオーディンによって神の力を手に入れ、世界に住む巨人たちを倒した。だから、巨人たちは人間を狙う……再び、復讐の炎を燃やして。そう思った神々は、ジークフリードを呼び戻し、人間にこのスロットという力を与えた。そして、ラグナロクの日――人はこの日を"神々の黄昏"と呼ぶわ。この日、神の軍と巨人の軍はぶつかり合い、お互いに数を削った。そして――」

そこまで言うと、月夜花は一呼吸おいた。そして、再びゆっくりと話し始めた。

「神と巨人は全滅した。相打ちの連続によって……そして、ラグナロクの日は終わりを告げ、世界はある一点、ジークフリード果ての地、ホッドミーミルの森だけが残った。そこで偶然動物たちと果物をとっていた二人の人間、リーヴとリーヴスラシルだけが生き残っていた。彼らはそこで戦いで傷だらけになったジークフリードに出会い、彼に今日の出来事を語られた。――もう自分たち以外に人間はいないということ、神も巨人も、全滅してしまったという事。それを語った彼はその場で生き絶えた。そして、彼らは自分たちに課せられた役割を感じた。世界の再生――彼らは交わり、子を作った。そこに2対の男女が生まれた。そして、子孫はどんどん増え、世界は再生していった。その過程でオークが生まれ、さらに世界は再生していった――。」

「その後の歴史は定かではないわ。まるで、誰かが抹消したように存在する空白の歴史。この間に何かがあったに違いない。そして、その歴史の最後に残った者、それが……」

「ロード・オブ・デス?」

マグナスが口を開く。月夜花はこくりと頷いた。

「そう……ロード・オブ・デス――空白の歴史より生まれし死へと誘う者――。それを私たちが倒した。リコリスと共に。……でも、それからわずか10年でヤツは復活し、リコリスも行方不明になってしまった。私はその真実が知りたい。だから、あなたたちに力を貸すわ。」

そう言うと突然月夜花の体が光りだし、そこから閃光が迸った。今度はライトニングボルトのような激しいものではなかった。優しい、柔らかい閃光であった。それはハルニャンの体を貫き、パチンと乾いた音を立てて消えた。彼女はびっくりした顔でキョロキョロと周りを見回した。

「え?え?何なにー?」

「私の神器をあなたに預けたのです。私の持つ、"静寂のフルート"を。」

それを聞いて、レーリンは困った顔をした。

「月夜花様、彼女はリコリスの旅を遂行する者ではないのです。」

「知っていますよ。フェイヨンの指南役なのでしょう?神器というのは」

月夜花がハルニャンに優しく微笑みかけた。

「その意思で持ち主を決定します。そして、決してそれは間違いを起こさない。私のフルートは、あなたを選んだのです。それに……」

急に真剣な顔になる月夜花。

「もう疲れたでしょう?あなたの過去の記憶は確かに辛い物かもしれません。でも、あなたはもう十分自分を痛めつけた。だから今度は、あなたが巣立つときです。」

その言葉にオワゾーネのタレ目がぴくっと動いた。

「過去の記憶?」

ロンが尋ねる。

「神器を預けし者の記憶を探り、邪念を取り払う。それも私たち精霊の役目です。彼女には――過去の親の記憶が重くのしかかっているのです。だから――」

突然、ハルニャンがもう聞きたくないというように、両手で耳を押えてその場に座り込んだ。

「やめてよ!せっかく忘れてかけてるんだから~……言わないでよぉ!」

しかし、月夜花は続けた。

「彼女の記憶――それは、小さい時の幼い記憶。彼女は、親に虐待されていたのです。」

「?!」

マグナスたちはその場に凍りついた。彼女がそんな過去を持っていたとは誰一人思ってもみなかったのだ。

「けれども、彼女は何をされようが常に笑っていました。殴られようが、酷い罵声を浴びせられようが。そうすれば、相手は呆れるだけで済むと思っていたようです。一番、それが彼女にとって楽な道。だから、彼女はどんなに苦しいことがあっても笑っていました。そして、徐々にどんなときでも笑うようになり、自分の本心を人に言えなくなり、やがて彼女は笑うこと以外をしなくなりました。しかし、そんな時――ある男がこの家に入ってきて、一家を皆殺しにしたようです。ハルニャンいつも倉庫で生活していたので、何とか隠れることができました。そして彼女は、一家を殺した犯人の姿を見ました。熊のような銀の服を着た、弓を持つ男です。顔は……残念ながら後姿なので見えません。おそらく、彼女が弓手になったのは彼の影響でしょう。幼い時に、一家を殺人という形ではありながらも、彼女を自由にしてくれた男。」

「――彼女はやがて、フェイヨンに流れ、町長に拾われて大きく、そして立派な弓手になりました。しかし、大きくなるにつれて、徐々に湧き上がる疑問。それは、"なぜ私の家族は殺されたのか"。今思えば、彼らはなぜ殺されなければならなかったのか……やっと殺人という意味がわかる年頃になってそう思い始めたのです。」

「……やめてぇ…」

気づけば彼女は大粒の涙をこぼしていた。しかし、その顔は笑っていた。

「いいですか、ハルニャン。」

月夜花は強い口調で言った。

「過去を無き物になど誰もできないのです。そうやって笑って、ごまかして、その疑問を忘れようと、そういう心ではいけないのです。過去の上に立ち、新たな出発をする事ができる――これが人だと思います。そして、私はあなたがそれをできる事を確信しています。」

ゆっくりと、地べたに座り込むハルニャンに近寄る月夜花。そして、彼女の前で手を差し伸べた。

「一緒に――彼らと共に、私と共に、ここで過去と向き合いましょう。そして、新たな出発をするのです。」

そう言われると、笑ったまま泣いているハルニャンは月夜花を見上げた。月夜花は優しく笑顔で彼女を包みこんだ。そしてその後ろで、マグナスがはにかみながら頷き、ロンは少し涙目になりながら何度も何度も頷き、レーリンは優しく微笑んでいた。

「一緒に行こう、ハルニャン。辛い旅になるかもしれないけど、私たちと一緒に。」

ハルニャンはその瞬間強い光を放った。そして頭上に輝くフルートが出現した。

「ありがとう、みんなぁ。出合ったばかりのわたしにこんなにしてくれて……わたし、もう怖くないよ~。一人じゃないような気がするもん。」

そして笑顔で月夜花の手をとる。その笑顔は、今まで彼女が見せた笑顔とは比べ物にならないほど輝いていた。

「だけど……一ついいかなぁ?」

ハルニャンが恥ずかしそうに尋ねた。

「なぁに?」

笑顔で答えるレーリン。

「ここで……今までの分――いっぱいいっぱい泣いていい?」

3人は同時にコクリと頷いた。最高の笑顔で。一瞬、ホッとした顔をしたハルニャンは次の瞬間、手をぐりぐりと目に当てて大泣きした。その涙は留まる事を知らない。

「おかあさああん!おとおさあん!何で死んじゃったのぉぉ!わたし、ずっといじめられてたけど、でも!でも!いなくなってほしくはなかったよぉぉ!ゔええええん!」

三人はその光景を静かに見つめていた。その後ろで、月夜花はふっと笑い、ゆっくりと消えていった――。


 泣き声は、冷たい洞窟の中でこだまする。偽りの仮面を洗い流すように涙がこぼれた……どこからともなく聞こえるフルートの音は静かに、けれども優しくその場を包み込む――。



7.~災厄の襲来~

「そういや、お前の聞きたかったこと聞けなかったなぁ。」
フェイヨンの洞窟の帰り道、今度はきちんとランプのある道を通って(やはりハルニャンの言っていた道は近道ではなかった)、お互いの顔を確認しながら帰る事ができた。その中で、ロンが思い出したように並んで歩いているマグナスに言った。

「あ、そうだった。」

「お前も忘れてたのかよ。」

バシっと彼の背中を叩いてつっこみをいれるロン。しかし、マグナスはそれに何の反応もしないで、何かを考えていた。

「もう!ロンったらすぐ暴力振るうんだから。大丈夫?」

その後ろを歩いていたレーリンはマグナスの背中を擦り、後ろから顔を覗かせてきた。

「痛み止めの薬ならありますよ~。」

にやにやしながらハルニャンもポーチから薬を一つ出してマグナスの頬にグリグリと当てた。

「まったく!レーリンはこれだから!こんなのは男のスキンシップだよな、マグナス。」

「あ、ああ……」

しゃきっとしないマグナスを再びロンがバシっと叩いた。その勢いで今度は、マグナスが前につんのめった。

「俺……」

急に口を開くマグナス。すぐにみんなは足を止めた。

「ん?」

「俺……」

再び繰り返す。そして彼は真剣な顔になった。

「俺……まだ、みんなと一緒に旅してていいかな?」

言って彼は恥ずかしそうに下を向いた。それを聞いたレーリンとハルニャンは笑顔で頷いた。

「もちろん!マグナスがいれば、心強いしね!」

「マグナスさんがいれば~、ロンさん寂しくならないで済みますね~。」

「まぁ、あれだな。いろいろと面倒起こさなければいいぞ。」

ロンは嬉しさを抑え、無表情を決め込んでいたが、それでも嬉しかったマグナスはみんなに頭を下げた。

「改めて、よろしく!」

「よろしく!」

そしてしばしの間、彼らは本来の過酷な目的を忘れ、お互い話に花を咲かせる――しかし、そんな時間も長くは続かなかった――それはフェイヨンの洞窟を出たとき……


 彼らは洞窟を抜け、久しぶりに外に出た。しかし、天気はあまり良くなかった。雲は日を隠すほど厚く空を覆い、時より遠くから雷の音がする。そして、彼らは洞窟の前で一人の男がうつ伏せで倒れているのを見つけた。白い長めの服はボロボロになっているが、間違いなくフェイヨンの伝統衣装である。

「おい、大丈夫か?!」

すぐにロンが近寄り、三人もそれに続いた。そしてロンがその男を抱きかかえると四人の表情が驚きに変わった。

「フォ、フォンツォー!?」

それは目を大きく見開いて、口から血を流している変わり果てた姿のフォンツォーだった。彼の服にはドロがたくさんついている。どうやらここまで這って来たようだ。その証拠に彼の這った跡がなまなましく道に残っていた。

「ひどい……誰がこんな事を……」

彼は目をさらに見開き口をパクパクさせ、血を吐きながら声を絞り出した。

「ロード……オブ……デ…ス……」

そして、「ひゃあ!」と奇声を発して天に手を伸ばすと、そのまま息絶えてしまった。

「おい!しっかりしろ!!おい!」

ロンが必死に揺さぶるが効果はない。と、その時。

「グオオオオオオオオオオオオオオ!」

フェイヨンの街から突然大きな叫び声が聞こえた。それと同時に建物が崩れる音もする。

「いけねぇ!みんな行くぞ!」

いの一番に駆け出すロン。それに続くマグナスとハルニャン。しかし、レーリンだけはその場にしゃがみこんで、顔を両手で覆って動こうとしなかった。

「レーリン!」

ロンが連れてこようとするが、マグナスはそれを止めた。彼には、レーリンに過去のロード・オブ・デスの記憶が蘇っているとわかったのだ。

「いいよ。三人で行こう!」

その言葉に一瞬顔が引きつったロンだったが頷いた。三人はすぐにフェイヨンの街へ降りていった――


 街は変わり果てていた。まだ生きている人々はロード・オブ・デスから逃げ惑い、山林へ、麓へ猛然と走って逃げている。奴の姿は町の中心、ちょうどソレーユたちが泊まった宿屋のあるところ辺りに確認できた。銀の兜をかぶり、両手には銀の槍と盾を持っている巨大な亡霊剣士。死霊の銀馬に乗った奴の身長は、町のどの建物よりも高く、それの二倍はあろうかというものであった。ロード・オブ・デスは

「あれが……」

「ロード・オブ・デス……」

初めてみるロード・オブ・デスに、マグナスとハルニャンは足がすくんでしまった。なんと禍禍しい風体。マグナスのいた世界に起きる全ての災厄を足してもかなわないと彼は瞬時に悟った。とその時、たくさんの人に混じって、マグナスたちのほうへ逃げてくる一人の少女が見えた。黒髪を肩で切った少女――それはまさしく宿屋の娘であった。

「あ、君は!」

マグナスが声を上げると、彼に気づいたように一生懸命走ってくる。彼のいるところまであと数メートル。その時、ふわっと何か銀色のものが彼女の首の辺りを通り過ぎるのが見え、彼女は急に身長が低くなった。続いて、空中を何か丸いものが赤い液体を出しながら飛ぶ。それでも動き続ける彼女には、顔が―― なくなっていた。かっと目を見開いて固まっているマグナス。そして、彼女は彼の前まで頭のない状態で走り続け、彼の隣にゆっくりと倒れた……。

「そんな……」

彼女の血を浴びてマグナスは呟いた。真紅の鮮血が彼の体と心を染め上げてく。彼は横に倒れた首無しの少女を見つめた。そして――

「うわあああああああああああああ!」

彼は怒りと悲しみに我を忘れ、ロード・オブ・デスのほうへ突進していった。

「おい、マグナス!やめろ!」

「マグナスさーん!」

仲間の制止を振り切り、マグナスは進み続けた。それに気づいたロード・オブ・デスが、彼に狙いを定めた。

「グオオオオオオオオオオ!」

そして、ロード・オブ・デスの槍がマグナスを捉えるその刹那。突然マグナスは酷い頭の痛みに苛まれた。頭の中を凄まじい勢いで駆け巡る記憶。それは走馬灯のように彼に一場面を思い出させる。青い髪の女性――マグナスを世界に連れてきたマントの優しい目――幼い頃の自分――そして再び青い髪の女性――今闘っているロード・オブ・デス――そしてなぜかあの子守唄が聞こえた。

 ヴィッディ アラシャメ ケプラット ローデス――
   ヴィッディ アラシャメ リコリス ――
     ヴィンドレス アクオータ インデルン……

「え?」

その瞬間、辺りは凄まじい光に包まれた。

「マグナス!」

ロンは目を覆い隠しながら叫ぶが返事がない。そして、大きな爆発音と共に、その光は砕け散った――


 しばらくの間、その閃光で目を開くことができなかった。徐々に辺りが元の光りを放ち始め、ロンとハルニャンはゆっくりと目を開いた。そこには、無傷のまま立ち放しているマグナスの姿があった。

「大丈夫ですかぁ?!」

それを見て急いで近寄る二人。

「……」

それでも固まっているマグナスの背中をロンはバシっと叩いた。

「おい!」

「あ、ああ……大丈夫。」

パンパンと両手を叩くマグナス。

「お前、奴に何かしたのか?」

「?!」

はっとなったようにマグナスはその場を見渡した。建物は崩壊し、あちこちで火事が起きている。そして、道にはたくさんの人の死体が生々しく残っていた。ただ、それを行った張本人、ロード・オブ・デスだけはその場から忽然と姿を消していた。

「奴はどこに?!」

再び怒りに我を忘れ、探しに行こうとしたマグナスの首根っこを掴んで、ロンが不思議そうな顔をして尋ねた。

「お前がやったんじゃないのか?」

「俺が?!」

「マグナスさんとロード・オブ・デスが接触しそうになった時に~、すっごい光が出て、それでロード・オブ・デスがいなくなったの~。」

ハルニャンはその現場を手を使って説明した。

「俺が……ロード・オブ・デスを?」

「わからねぇ。だがまぁ、何にしろ奴は去ったみたいだな。」

ロンがふうとため息をつく。マグナスは再びはっとなって少女が倒れているところへ走っていった。ハルニャンも元あった町長の家に急ぐ。

「なんで……」

再度そこに立ち尽くすマグナス。大粒の涙が少女の動かない体にしみ込んでいく。しばらくそっとしておき、ロンが後ろから優しく肩に手を置いた。

「仕方ないんだ。ロード・オブ・デスが現れた街は、今まで助かった試しがねぇ。それどころか、この街はまだいい方だぜ。きちんと逃げ切った奴もいる。」

そう言って、少女に手を合わせて合掌した。

「犠牲は……大きい。だけど、助かった奴もいるんだ。……それで良しといこうじゃねぇか。」

ロンはもう一度マグナスの肩に手を置こうとしたが、それを彼は払いのけた。

「何でだよ!!」

「マグナス…」
ロンが寂しそうな表情でマグナスを見つめた。マグナスの瞳は深い悲しみに彩られ、ロンをバケモノでも見るような目で見ていた。

「どうしてそうなるんだよ!犠牲が大きい…?!違うだろ?!何でそんな平気な顔してられるんだよ!!昨日まで…… この子は生きてたんだぞ?!俺たちに……ご飯を運んできてくれたんだぞ!!昨日まで……あの子笑ってた!ミルクをこぼして熱いって言ってた!なのに……もういないんだぞ!!」

憤りそして嘆き、マグナスは叫んだ。それをロンは真剣な眼差しで聞いていたが、首を横に振った。

「マグナス……違うんだ。」

「何が違うんだ!!何も違わない!!お前は……!」

「このっ!!」
急にロンも大声を出し、マグナスに掴みかかった。そして一発、ゴンっと彼の頬を殴り、吹き飛ばした。ソレーユは驚いてロンを見上げた。

「何もわからねぇてめぇが何言ってやがる!!ロード・オブ・デスに故郷を奪われたおれの気持ちをわからねぇ貴様が!おれは……」

気づけばロンの目には涙が溜まっていた。それを必死に堪える姿はマグナスを黙らせるには十分であった。

「目の前で……親父とお袋を殺されて……島のみんなも殺されて……心も体もボロボロで……それでもレーリンの前では強い存在じゃなきゃいけねぇ。あいつは弱いんだ。俺がしっかりしてねぇと、あいつはすぐ泣いちまう!すぐに死にたいって言い出す!それもわからねぇてめぇは……」

ロンが続けようとした時、ハルニャンの声が二人の会話に割り込んだ。

「ちょっと~、二人とも来て下さい~。町長が生きてます~!」

その言葉にロンはすぐにハルニャンの元へ向かおうとしたが、マグナスはその場で伏していた。

「マグナス!!」

それを見たロンが彼を一喝する。マグナスはそれを聞いてはじけたように体が動き出した。そして、二人はハルニャンの元へ向かった――。



8.~傷痕――そし旅立ち~

 ロード・オブ・デスによるフェイヨン強襲。町長によると、マグナスたちが洞窟から出てくるほんの20分ほど前の出来事であったらしい。

――晴天の空模様は徐々に曇り始め、時折強風や雷が鳴り響いてきた。変だと思い、町人が外に出て上空を仰いでいると、紫色の巨大な渦が出現した。それは上昇気流の発生によって空気を全て吸い込むように広がり、急にそこから銀の槍が出てきた。それは真下にいた町人を串刺しにし、そのまま紫色の空間に引きずり込んだ。そして、誰かがこう叫んだ。

「ロード・オブ・デスだ!!」

それからすぐに紫色の空間からロード・オブ・デスが現れ、町を槍と魔法でどんどん破壊していった。フェイヨンの兵士が出撃するも、一瞬にして葬り去られてしまった。町長は一刻も早くこの事をレーリンたちに知らさねばと洞窟にフォンツォーを送り、そして自らは剣と盾を擁して敵へと向かっていった。しかし、外へ出ようとした時、ロード・オブ・デスの攻撃は町長の家にも及び、2階が槍によって跡形も無く消し飛んだ。先ほどまで2階にいた町長は九死に一生を得た形になったが、それから2階崩壊の破片が町長へ降り注ぎ、結局出撃できずにその場で地団太踏む結果になってしまった。

 そこへマグナスたちが現れ、不思議な事にロード・オブ・デスは後退して姿を消した。そして、町長は生きながらえ、ハルニャンによって発見され、救助された――。


「ふう……これでいいアル。」

 その後マグナスたちは、瓦礫の下敷きになっている鎧で武装した町長を助け出し、レーリンを呼んで大きな墓を作った。町の中で死んだ人、森に逃げる途中に死んだ人、フォンツォー、宿屋の女の子……みんなが入るぐらい大きなお墓を掘って、そこに全員を丁寧に並べた。そして土を被せ、フェイヨンに伝わる返魂のお札を貼った墓標をその上にのせた。作業は夜中まで続き、一応ひと段落を終え、5人は元あった町長の家の瓦礫の上に腰掛けた。

「あの世で……報われるといいな。」

「ウム。」

ロンは隣でまだ震えてるレーリンに声を掛けた。

「おい、大丈夫か?」

彼女は笑顔で返事をしたが、声もまた震えていた。

「大丈夫。前よりはずっと良くなったよ。」

それを聞いてロンは複雑な表情をした。マグナスも黙って空を仰いでいた。

「人間は脆いものアル……」

町長が語り始めると、4人はそれを黙って聞いた。

「ロード・オブ・デス。たった一度奴がやってきただけで何もかもでやられてしまうアル。今まで築いてきた全てを一瞬にして崩壊させられてしまうアル。それでも人は何もできないアルヨ……それをただ見ている事しか……皮肉なものアル。みなが死に、町長が生き延びる……運命を呪うアルヨ……」

言葉にならない苦痛――そんな言葉がぴったりだった。町長としての責任を果たせなかったのだ。

「でも、ちゃんと逃げ切ったヤツもいるようだぜ?街から出て行ったやつは無事だ。」

「それがせめてもの救いアル……でも、チンは死んでいったみなに顔向けできないアル……」

ガクリと肩を落とす町長。と、その時急にハルニャンがピョンと跳ねて立ち上がった。

「大丈夫ですよ~。」

「ム?」

苦痛な表情を浮かべる町長に彼女はにっこりと笑いかけた。

「フェイヨンの人はみんな優しかったし~、みんな町長さんの事大好きでした~。だから、誰一人町長さんの事、恨んでないですよ~。きっと、絶対に~。」

それを聞いた町長は複雑な表情をゆっくりと変え、優しく彼女に微笑んだ。

「そう…アルカ。ありがとうアル、ハルニャン。少し……気が楽になったアルヨ。」

「いいえ~。それより~、これから町長さんはどうするんですか~?わたしは~、これからみんなと一緒に"リコリスの旅"に出ようと思うんですけど~。」

「お前も出るアルカ?」

その問いに迷い無く首を縦に振るハルニャン。3人もコクリと頷いくと、町長はそれに満足したような顔をした。

「そうアルカー。それじゃ、ちょっと待ってるヨロシー。」

町長はそう言うと、おもむろに腰を上げて全壊した自分の家へ入っていった。そして何かを探すような音を立て、「あったアル!」という叫び声が聞こえると、何かを抱えて帰ってきた。

「これをお前にあげるアル。」

彼が差し出したのは、青い光沢が輝く美しい弓であった。それをハルニャンは「わぁ!」と声を出して受け取った。弓は月の光に照らされ、さらに強く光っている。

「これは~?」

「それは『ルドラの弓』といって、大昔フェイヨンにいた伝説の弓士ルドラの愛用品だったアルヨ。その弓は如何なる悪をも浄化し、正義を守る弓と言われているアル。ルドラはその弓で、大昔フェイヨンに攻め込んできた巨人三匹をたった一本の矢でし止めた伝説が残ってるアル。」

自慢げに説明する町長。それを聞いてハルニャンは目を輝かせた。何度も何度も礼を言った――

「さて……」

日付が変わってから数時間、闇は一層深みを増してきた。

「とりあえず今日はここで休んでいくヨロシ。暗い夜道は危険アルヨ。」

「そうさせていただきます。」

そして5人は寄り添うように星空を見上げて横になった。

「それじゃ、お休みアル。」

「お休みなさい。」

「おやすみなさ~い。」

 満天の星空――月と星々が美しくせめぎ合い、そして夜の唄を歌う。散っていった人々が歌うのか、それともこれから生まれてくる人々が歌うのか。時々夜が恋しくなるのは、この唄が聞きたいからなのかもしれない――


 翌朝、太陽が昇ると、一行は身支度を整えた。そして、次なる目的地を砂漠の町モロクにとることにした。

「何も土産の品がないアルけど……頑張るアルヨ!」

少し寂しそうに、けれども力強く町長は4人に激励した。

「はい。でも……町長さん本当にここに1人で残るんですか?」

ルナが憚って尋ねた。

「そうだぜ。一緒にどっか住み易そうな場所を探そう。いくら何でも1人で街の復興は。」

しかし、町長は「ははは。」と笑いながら首を横に振った。

「街の復興はまだ考えてないアル。でも、もしかしたらここに新しい巡礼者が来るかもしれないアル。その時に誰もいなかったらどうなるかわからないアル。」

「そっか。」

町長の言葉に4人は頷いた。

みんなと一緒に頑張るアルヨ。」

そう言って墓に視線を落とす町長。


「それじゃ……行こっか。」

 ルナがくるりと進路を西にとった。

「おう、頑張ってくれよ、町長さん!」

ロンはバシっと町長の肩を叩いた。

「無事に旅を終えたら必ず帰ってきますね~。」

今までありがとう、とペコリと頭をさげるハルニャン。

「それじゃ。」

少し元気無さそうにマグナスも会釈する。

 ――そして一行は山岳都市フェイヨンを後にした。ノブナガと一緒に進んだフェイヨンの森を再び下る。

「それじゃ、新しい仲間、ハルニャンも加わったことだし!頑張ってリコリスの旅、成功させよう!」

坂道をハルニャンと並んでグングン歩きながらレーリンがそう言った。

「ガンバろぉ~!」

「お、なんかルナ嬉しそうだな。」

レーリンと一緒に並んでその後ろで歩くロンがニヤニヤする。レーリンも悪戯に笑った。

「だって、女の子が一緒なんだもん。ねー。」

「ね~。」

「っけ!これだから女は……なぁ、マグナス。」

冗談交じりで悪態をつくロン。しかし、マグナスはまだ元気が出ず、黙ったままロンに反応しなかった。

「マグナス、どうかしたの?」

心配そうにレーリンが顔を覗き込んだ。

「いや、何でもない。」

「しゃきっと……せいやーーー!」

突然ふわりとマグナスの体が宙に浮かぶ。びっくりしてマグナスが下を向くと、ロンが彼を持ち上げていた。

「おりゃ!」

そして、おもむろにマグナスを投げ飛ばすロン。

「わわわっ!」

ハルニャンの方へ飛んで行った彼を受け止めようとしたが、案外勢いがついていて、2人とも地面にしりもちをついてしまった。

「もー!ロンったら!――二人とも大丈夫?」

レーリンは急いで2人に駆け寄った。2人はお互いに顔を合わせて痛がっていた。しかし、謝ろうと二人が顔を合わせた時、どっと2人共大笑いした。

「マグナスさん、顔に泥が~。」

「お前こそ。」


 ――それからしばらくレーリンがロンに説教し、再び歩き出した。そして、一行はとうとう平野にたどり着いた。森から出ると、爽快な太陽が一行をお出迎え。その光をいっぱいに浴びて、みなの体が黄金に輝いた。

「いざ!モロクへー!」

「おぉ~!」

レーリンとハルニャンが嬉しそうに平野を走り出した。それを後から二人がゆっくりと歩いて追いかけた。

「ロン。」

不意にロンに話しかけるマグナス。ロンは立ち止まった。

「んん?何だ?」

「さっきはありがとう。それと……昨日はごめん。」

「なんだそんな事か。」

鼻で笑って、マグナスの胸に拳を当て、再び前へと進み始めるロン。自分の右手の親指を立てながら。「いいって事よ。」親指がそう言っていた。その後姿を見てマグナスはやっと心が落ち着いた。

「は~や~く~!置いてっちゃうよー!」

もうかなり小さくなったレーリンたちが叫んでいる。マグナスは走り出した。そして、ロンを追い越すと、

「ロン!あそこまで競争!」

「あ!てめぇフライング!」

ロンも後から走り出した――
 一行は太陽を背に、これから起きる色々な出来事に胸を躍らせ、ただ純粋に、そして軽快にモロクを目指した――



9.~静寂のフェイヨン編エピローグ~

 ――ここは少し戻ってフェイヨンの街。静かになった街は鳥の囀り、木々のざわめきが一層大きく聞こえるようになっていた。しかし、その静寂を打ち破るように、とある男の悲鳴が聞こえた……町長だ。傷だらけで逃げ回っている。その後ろには、見慣れぬ黒いローブで全身を包み、大きな仮面をつけて顔を隠している人間が三人、そして熊のような銀の服を着て、同じような仮面をつけている、弓を持つ男が一人、町長をじりじりと追い詰めていた。

「お前たち、巡礼者じゃないアルネ!」

矢が刺さった左腕を押さえながら血交じりにそう叫ぶ町長。

「我々はそんな事は一言も口にした覚えはない。それより、あなたの街で死んだ人々の死体を譲っていただきたい。且つ……」

そう言うとその男はゆっくり弓を構えた。

「我々の存在を知ったあなたには死んでいただきたい。」

「や…め……」

逃げようとした町長の後ろで、男は矢をとどめていた指を離した。ビュンっと凄まじい音を立ててそれは町長の頭へと直進する。それが町長を貫通すると、彼はそこから血飛沫を上げて倒れていった。薄暗い血は町長の下に溜まっていった。

「相変らずえげつないのね。」

それを見ていた一人のローブの者が乾いた声で言った。その声は女性のものであったが、それは驚くほど冷たかった。まるで生気を感じない声であった。弓士はそれを無視して町長の死体を踏みつけ、マグナスたちが掘った墓の前で止まる。そして、ふふっと笑って無造作に墓標を引っこ抜いた。

「イワンコフ。」

弓士に言われると、後ろにいた一人がおもむろに前へ出てきた。熊のように大きい。そして墓の上に手を当て、なにやら呪文を唱え始めた。

「ホーリーライト!」

重い金属音のような男の声で仮面ローブがそう唱えると、白い柔らかな光がその墓を包み込んで爆発した。土がドンと盛り上がり、辺りに散る。そして、そこからロード・オブ・デスにやられた人の死体が大量に出てきた。

「ワサビーフ、長官に報告しろ。いい実験材料が大量に手に入ったとな。」

ワサビーフと呼ばれた先ほどの女性はささっとその場から去り、ホーリーライトを唱えた男はすっと下がった。

「モッチーニ、巡礼者への手はずは抜かりないか?」

弓士がもう一人の仮面ローブに尋ねた。

「彼らの助けになるように手筈しておきました。」

少し幼げな少女の声(やはり冷たい)がそう言うと、弓士は満足そうに笑った。

「よし、それでいい。さあ、いよいよ長官もあの計画を始める時が来たと言っていた。我ら秘密機関―ネオ・イージス―はこれから忙しくなる。次の指令を受けにリヒタルゼンに戻るぞ。……イワンコフ。」

イワンコフは再び何かの詠唱を始めた。

「ワープポータル!」

彼がそう叫んで手を前に振りかざすと、その場所に小さな渦が現れた。そして再び詠唱。

「バジリカ!」

唱えると、今度は薄赤い空間が墓の中の人と町長の死体を包み込んだ。イワンコフが手を動かすとその方向へ死体を包み込んだまま赤い空間が移動した。そしてワープポータルまで運ぶと死体は忽然と姿を消した。それを確認すると、弓士の男とモッチーニもまた、その渦に触れる。すると姿が消えた。そしてイワンコフも……後には何も残っていなかった。ただ、人がいなくなり、真の静寂を得た森と、崩壊した街以外は――
2010-02-15 [ Mon ]
Ragnarok Memories ~遥かなるリコリスの旅~     


第二章:静寂のフェイヨン編

1.山岳都市

 鳥のような馬(ペコペコという)に乗った四人は、プロンテラを出て森を越え丘を越え、「山岳都市・フェイヨン」にやってきた。街の周りを取り囲むようにして川が流れ、木でできた壁が街と丘野をわけている。鳥のさえずり、虫の鳴き声がたくさん聞こえた。


 街の前までたどり着くと、ノブナガは三人をペコペコから降ろした。マグナスだけが異様なまでに疲れている。

「なさけねぇなぁ、マグナス。たかがポリンぐらいで驚きやがって。珍しいもんじゃねぇだろ。」

そんな彼を見て呆れたようにロンはため息をついた。

「お、俺は・・・あんなの・・・・・・見たことも・・・・・・ない・・・・・・」

息も絶え絶えにマグナスが声を搾り出す。実は、この街に来る途中、森の中でポリンという体がベトベトした丸い半透明の魔物とであったのだが、マグナスのいた前の世界では魔物がいなかったので、彼だけは驚きすくみあがったという訳だ。ちなみに、この魔物は最弱の魔物の一種であり、ロンの攻撃によって一瞬で消し飛んだ。

「ロン、そんな、マグナスに悪いわ。彼は記憶をなくして・・・」

「だから、俺は記憶なんかなくしたわけじゃないって!!本当に黒いマントの奴にここに連れてこられ・・・・・・」

大声を上げたので、町の入り口にいた人たちがなにかあったのかとソレーユたちのほうをチラリと見た。それに気づいたノブナガはマグナスの口を押さえた。

「まぁまぁ、どっちにしても、そんな事はあんまり言うもんじゃないよ。変な人だと思われるからね。」

「変なのはあんたた・・・」

ノブナガの腕の中でもがくマグナス。その少し抜けた光景に思わず、レーリンとロンが笑い出す。ノブナガも笑いをこらえていた。


 しばらくして、腕の中でもがくのに飽きたマグナスを放すと、ノブナガは彼らに何かが入った重い皮袋を一つずつ渡した。マグナスが開けてみると、中には光り輝くコイン(お金と思われる)が数百枚と、短剣が一本入っていた。

「これは?」

「君たちは我々の誇り高き"リコリスの旅"の遂行者だ。少しでも役に立ちたいと思ってね。少量だがお金と道具をあげよう。これで当面金に困ることはあるまい。」

レーリンが驚いてノブナガを見上げる。

「こ、こんなに?!いけません!」

ペコペコの上で、彼は高らかと笑った。

「なぁに、これぐらい当然って事さ。これも全て"リコリスの旅"を送る者たちへのせめてものお礼さ。・・・・・・さて・・・・・・」

そう言うとノブナガは急に真剣な顔になった。

「いいかい、三人共。"リコリスの旅"は未だに一度も成功していない過酷な旅だ。年々巡礼者も減っている。けれども、どうか、諦めないでほしい。勇者リコリスたちの意思を継ぎ、必ずロード・オブ・デスを打ち破ってほしい。」

「はいっ!!」

ロンとレーリンは大きな声で返事した。それを聞いて、ノブナガは優しく微笑む。

「よしよし、いい子達だ。じゃぁ、おじさんは行くよ。またグラストヘイムへ帰らなくちゃいけないからね。」

「ま、待ってよ!」

赤いマントを翻しペコペコを走り出させようとした時に、マグナスが横槍をいれた。ノブナガがまた振り返る。

「俺、どうやって元の世界に帰ったらいいかわからないよ。」

「お前は寝れば治るだろ。」

ロンがたいして興味もなさげに答えた。

「そうだねぇ、もしもだが・・・・・・君の言っている事が本当で、こことは別の世界があるとしたらだ。精霊たちに聞くのが早いかもしれないな。」

「精霊?」

「ああ。五百年前ぐらいかな、ロード・オブ・デスを打ち破った七人の勇者たちがいてね。彼らは死後もその地方で精霊となって生き続けてるんだ。"リコリスの旅"の巡礼場でね。彼らなら、何かわかるかもしれない。」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、ノブナガ様!まさかこいつを俺たちと同伴させる気じゃぁ・・・・・・」

ロンが慌ててノブナガに尋ねた。彼はさも当然というように首を縦に振った。

「無論、その通りだよ。ほら、よく言うじゃないか。"旅先で出合った仲間は大切にしなさい"って。」

「で、でも・・・"リコリスの旅"は過酷だし・・・第一、こんな生まれる前の赤ん坊さえ知ってるような事を知らない奴を旅には・・・・・・」

それを聞いてノブナガは少し考えた。そしてすぐに、思いついたと指をパチンとならした。

「そうだ。君たちにこれをあげよう。だから、彼を少しの間連れて行ってくれないか?」

ノブナガが茶色い布切れのようなものをレーリンの方へ投げた。彼女はそれを受け取るやいなや、すぐにびっくりして「わぁ」と声を上げる。

「何だよ、それ。」

「"巡礼者公認書印"のついた肩布だよ。これを持ってれば、どんな聖地にだって入れる。」

ロンも思わず驚く。マグナスだけが話についていけず、もらった皮袋のひもを指に巻きながら、話を聞きたげに三人の顔を順々に覗っていた。それに気付いたノブナガがさらに付け足した。

「最近の世界は荒れていてね。特にオーク族の村なんかは、"リコリスの旅"を遂行する者だと言っても、精霊のいるオークダンジョンにはいれてくれない事があるんだ。だから、巡礼の中心であるグラストヘイムがこの公認書を発布したのね。これさえもってれば、どんな人だって"リコリスの旅"に口出しできないようになるんだ。これを持つ者はグラストヘイムと常に共にあるという意味なんだよ。」

得意げにノブナガが説明する。しかし、"リコリスの旅"自体がよくわからないマグナスにとって、その重要性もわからなかった。

「でも、こんなもの私たちがもらって・・・」

「ははは、気にするな。それにそれを持っていれば、お前さんたちも楽だろう?」

ウィンクして、レーリンの頭を撫でた。そして、再び向き直る。

「それでは、諸君!健闘を祈る!!ゆけ、ペコちゃん!」

そう言って颯爽とペコペコに跨り走り去った。後には、三人が残されていた。

「はあ、ノブナガ様って噂通り、面白いおじさんだな。」

ロンが「ははは」と軽く笑うと、レーリンも微笑んだ。やがて、奇妙な連れの方に顔を向けた。

「まぁ、とりあえず・・・マグナス。」

真剣な眼差しでマグナスと向かい合うロン。しかし、何を言っていいかわからないのか、しばらくはお互いが黙っていた。

「とりあえず、三人のもらったものを整理するか。フェイヨンの宿屋にでも行こうぜ。」

ロンを先頭にして、三人はフェイヨンの街の中へ入っていった。


 あたり一面に広がる緑の草葉。さきほどのプロンテラよりも高山地帯にあるので、空気がとても澄んでいた。木造の、少し古風な感じの家々が軒を連ねている。街に入った三人は、街人に宿屋の場所を聞き、宿をとった。宿には、中年の痩せた主人がいて、娘と思われる17,8ぐらいの少女に、二階の部屋へ案内させた。黒髪を肩で切ったショートカットの良く似合う女だった。

「何かあったら、気軽にお申し付けください。」

満面の愛想笑いでマグナスたちにそう言うと、部屋から出て行った。ロンは、一気に緊張が抜けたのか、フカフカのベッドを前にして、すぐに横になった。

「ふぅー・・・つかれたぜ。」

頭をボリボリと掻きながら、「くぁぁ~・・・」と大きく欠伸をする。レーリンも同じようにベッドに腰を下ろして欠伸をした。ただ、マグナスだけはまだ緊張の糸が途切れず、座りもしないで、部屋を行ったりきたりしていた。

「おいおい、マグナス。少しは落ち着けよ。」

見かねたロンが彼を止める。しかし、マグナスは睨み返すと、また無言で部屋を右往左往し始めた。

「なっちまったモンはしょうがねぇだろ?寝て治らなくても、精霊様に会えば、きっとわかるさ。」

「精霊様」という言葉を聞いて初めてピタッとマグナスの動きが止まった。まず、最初に自分が来たこの世界について知る必要があると、そう思った。

「その精霊やら、"リコリスの旅"やら、ロード・オブ・デスやら言ってるけど、それは一体何なんだよ!」

そこでレーリンがはじめて口を開いた。

「じゃぁ、持ち物の整理が終わったらマグナスに話してあげよう?記憶を無くしてるとはいえ、わからないままじゃ嫌だよね。」

まるで子供に昔話を話すような、無邪気な笑顔。マグナスはどぎまぎしてしまった――という事で三人はもらった皮袋の整理を始めた。まず、ロンがテーブルの上に中身をぶちまける。ジャラジャラという音と共にマグナスと同様数百枚のコイン、何かの葉が出てきた。これはイグドラシルの葉というとても貴重な葉で、煎じて飲めば、体のあちこちの傷が一瞬にして治るものだとレーリンがマグナスに教える。次にレーリン、これも同様大量のコインと、ハートマークのついたヘアピンが入っていた。レーリンは最初、かわいいと感動していたが、その裏に、「愛のこもったぜるばーどすぺしゃる」と書いてあるのを見つけ、苦笑いをした。最後にマグナス。前に出したように、コインと短剣が一本入っていた。ロンがそれを品定めするように見て、突然「ああ!」と大きな声を上げた。

「何かあったの?」

マグナスも不安そうな目でロンを見つめている。彼は二人に短剣の柄の部分を見せた。そこには剣の模様に絡みつく対になった二匹の龍の紋章が入っていた。

「これがどうかしたの?」

レーリンもマグナスもそれが何なのか全くわからなかった。ロンは誇らしげに二人に言って聞かせた。

「これはグラストヘイムの王家の紋章だぞ!それが入ってるって事は、これは王族が使うグラディウスだぜ、たぶん。」

この世界に知識がないマグナスにも、「王族が使う」という事はすごいものだという事がわかった。

「よし、これはおれが貰っとこう。」

懐にグラディウスを入れようとしたが、途端にレーリンが怒る。

「ロンは短剣なんか使わなくたって大丈夫でしょ?!マグナスに護身用として持たせておいたほうがいいわよ。ね、マグナス?」

「護身用にグラディウスなんかあるかよ!こんなモンこいつに持たせてられるかって。」

「ローンー?」

「はいはい、わかりましたわかりました。…ほらよ、マグナス。大事に扱うんだな。」

ポイっとグラディウスをマグナスの方に投げた。マグナスは慌ててキャッチする。ずっしりと重いその短剣を繁々と見つめた。何か、不思議な力を感じたような気がした。

「さて、整理も終わった事だし、寝るか。」

ロンはそう言ってつまらなそうにベットの上に寝転がった。レーリンはロンにべーと舌を出して、それからにっこりとしてマグナスに向き直った。

「じゃぁ話してあげるね、この世界と"リコリスの旅"について。」

マグナスが真剣な顔で頷くと、レーリンは得意げに口を開いた。

「昔昔、ずぅっと昔、世界には人間、オーク、他の動物が共存して生活していたの。戦いのない、平和な時代があったらしいわ。でも、そんなある日、突然世界に"死へと誘う者・ロード・オブ・デス"が現れたの。本当に突然ね。そして、世界に魔物を放ち、現れては町を破壊し、人々を殺し、家を焼いたの。それでね、不思議なのは、ロード・オブ・デスが人間だけを殺すっていう事だった。それで、当時の人間たちは、人と同じぐらい賢いオークが呼んだんじゃないかって思ったのね。でも、オークはそんな事は知らないってずっと言ってたんだけど、結局人間は彼らが呼んだと決めつけて、オークと戦争を始めたの。その時に、昔からすごい魔法の力を持った人たちがいたんだけど、その人たちは争いは好まないと言って、エルメスプレートという最北端の山脈の奥に行って、人間には味方しなかった。その末裔たちがつくった都市が、今の"シュバルツバルト共和国"っていう国になってるんだけどね。」

元々歴史が好きだったマグナスはいつの間にか彼女の話に夢中になって聞き入っていた。

「それで、人間とオークはお互いに憎しみあうようになって、戦渦はどんどん広がった。けれども、500年前、とある一人の女性が世界にやってきた。その人が"リコリス"よ。彼女は当時バラバラだった世界を束ね、協力することの大切さを説いて周ったらしいわ。そして、彼女には各国から仲間ができた。オーク族の長オーガニス、凄腕剣士ヘニョ、月の使者・月夜花(ウォルヤファ)、東湖城城主ウエポン、蟻の女王マヤー、不死王オシリス。彼女たち七人はリコリスの指揮の下で属性という枠を超え、ロード・オブ・デスに終焉を与えるべく立ち上がったの。そして、彼女たちはロード・オブ・デスを倒した。彼女たちは、世界に眠っていた、"手に入れし者、巨大な力を得ん"と言われていた七つの神器を集め、神曲を奏でた。ユミル様たちはその力を手に入れ、精霊化し、奴を倒したの。その時の世界中の喜びと言ったら、もう世界が割れてしまうんじゃないかって思うぐらいすごかったらしいわ!世界中の人々がリコリス一行を精霊として崇め、その後死んでからも精霊として神器を護る役目についたの。そして世界は再生していった。」

そこまで言うと、レーリンは急に暗い顔になった。

「でも、それからわずか10年後、再びロード・オブ・デスが現れた…そして当時首都であったプロンテラとその衛星都市イズルードを焼いた…その時、プロンテラの王様が消えちゃったらしくて。さっき見たように、その騎士団たちが死んでもなお彷徨い、王の帰還に備え、死霊の騎士レイドリックとなってプロンテラを護っているの。それでね、当時第二首都だったグラストヘイムの王はこれを聞いて、世界中にリコリスの神器と神曲の話をしたの。そして、主に私たちのように故郷を失った人を中心に、ロード・オブ・デスに復讐するために旅の巡礼者は年々増えていった。リコリス様たちの歩んだ道を行き、世界を救う旅――そしてその旅はいつしか、"リコリスの旅"と呼ばれるようになった…」

「それでレーリンたちも"ユミルの旅"をしていると。」

聞き終わったマグナスは真剣な顔をしていた。なんとなく話がつながった――そんな気がした。

「でも、そのロード・オブ・デスって奴は復活しちまったんだろ?だったら今度も復活しちまうんじゃないのか?」

それを聞いてレーリンは悲しげに笑った。

「そう…でも、復活するかもしれないし、しないかもしれない。するとしても、止められるかもしれない。」

「そんなもんか。」

マグナスは聞きたい事がたくさんあったが、これ以上は話さなかった。レーリンの瞳はいつしかマグナスではなく、どこか遠くを見る光に魅入られていたのだ。故郷を顧みているようだ。ロンはグゥグゥと寝息を立てて寝ている。マグナスはこの世界と向こうの世界の関係について考えていた。



2.~真夜中のララバイ~

 それから数時間経って、宿の少女が夕食を運んできてくれた。焼きたてのパンと赤いスープ。スープの中には赤ハーブという、ハーブの中で香り付けに最適なものが入っているから赤くなっているだけらしい。一口飲んでみて、それもわかった。暖かいスープが乾いた体に浸透していくようだった――。

 三人は夕食を食べた後、特にすることもないので、ベットに入った。

「おやすみ、ロン、マグナス。」

にこやかにレーリンが言うと、マグナスは少し顔を赤くした。

「お、おやすみ。」

ロンがその顔を見て、ベッドの中からブフッと笑っているのが聞こえた。レーリンは気にするそぶりすら見せず明かりを消し、三人は床についた――。


 ―何時間経っただろう。夜中、マグナスは変な夢を見た。幼い時の記憶か、彼は、自分の家に4歳ぐらいの自分を見ていた。青い髪を無造作に立てた子供が一人で積み木をして遊んでいる。と、結構高くつめていた積み木が、上にもう一個置こうとしたら崩れてしまった。マグナスは泣き出した。すると、部屋の奥から一人の綺麗な女性が出てきた。マグナスと同じように、透き通った青い髪をしている。マグナスはビックリした。自分の本当の母親の夢など一度もみた事がなかったからだ。

「か、母さん?!」

しかし、その女性はマグナスには気づかず、その子供を抱いて、頭を撫でてあげていた。そしてコバルトブルーの目を優しく輝かせ、子守唄を歌った。
 ヴィッディ アラシャメ ケプラット ローデス――
   ヴィッディ アラシャメ リコリス ――
     ヴィンドレス アクオータ インデルン……
  
 子供は泣き止んで穏やかな眠りに落ちたような顔をしている。マグナスは急に懐かしい気分になった。しかし、すぐに耳鳴りがして、突然目の前が真っ暗になる――はっとして彼は目覚めた。ゆっくりと体を起こし、部屋を見回す。ロンが豪快にいびきをたて、レーリンはちょこんとベッドに収まり寝息を立てていた。マグナスはそれを確認すると、二人を起こさないようにして部屋を出ていった。

 廊下は寒い風が入り込んでいる。マグナスは開いている窓を全部閉め、一階に降りた。階段を下りる音が不気味に廊下にこだまする。一階には、ダイニングのようなところのソファーの上で店主が小さくなって寝ていた。その前のテーブルには酒の入ったビンとコップ、つまみのようなものの残りが置いてある。

「あ、どうかなさいましたか?」

急に声を掛けられてマグナスは「うあぁっ」と情けなく叫んでしまった。慌てて振り返ると、そこには先ほど部屋へ案内してくれた娘がいた。

「ご、ごめんなさい。驚かせるつもりじゃなかったんですけど…」

「あ、いや!俺のほうこそ大きな声出してごめん。いや、実は目が冴えちゃってさ。」

少女は伏し目がちに、「そうですか。」と小さく頷いた。マグナスは彼女がどこかダリアと似ている気がした。

「じゃぁ、ホットミルクをお作りしますので、そこにお座りになっててください。」

「あ、ありがとう。」

マグナスは店主のいないほうのソファーに腰を下ろすと、少女はゆっくりと厨房へと消えていった。する事もないので部屋を見回す。良く手入れされた花がきれいに壺に入っていて、部屋もピカピカになっている。これもあの少女がやったのかなとマグナスが思っていたその時、厨房のほうから「熱っ!!」という少女の声が聞こえた。

「大丈夫?」

心配そうに厨房を覗き込むマグナス。「はい、大丈夫です。」という動揺した返事とほぼ同時にまた、「熱っ!!」という声が聞こえた。5分ほどして、少女が涙目になりながらも厨房からカップに入ったホットミルクを持ってきた。意外にも少女は自信作と言わんばかりに胸を張り、それをマグナスの前に置いた。

「お待ちどうさまです。」

「ありがとう。」

そう言って一口飲む。その瞬間、マグナスの口に砂糖の甘い匂いが広がった。一瞬しかめっ面をしてしまった。もうミルクというより白い砂糖の飲み物に近い。

「これ…砂糖どのくらい入れたの?」

少女は少し考えた。

「えっとですね、夜は甘いものがいいと聞きましたので、角砂糖10個ほど入れましたけど…」

「…」

マグナスは彼女の気持ちを考え噴き出してはいけないと、必死に甘さに堪えながら無言で飲んでゆく。

「どうですか?」

そんな彼に酷な事に、少女が尋ねた。チラリと横目で見ると、屈託のない真剣な目つきでマグナスの感想を待っていた。

「う…うんうん、うまいよ…なんていうかね…この甘さがいい。」

若干涙目で搾り出すようにそう言った。半分ぐらい飲みほすと、底に溶けきらない砂糖の塊が見えた。さすがにそれは飲めないのではじめてカップを置いた。その時初めて少女がにっこりと笑った。愛想笑いではない、本当の笑顔。

「良かった。いつもお客さんに甘すぎるって言われるんですけど、私的にこのくらいが丁度いいんじゃないかなぁと思っていたので。まだお砂糖はいっぱいありますよ!」

どうやら相当の甘党のようだ。彼女はまた厨房に戻ろうとしていた。

「いや、ちょっと夜の風に当たってくるよ。」

ここでゆっくりしているともう一杯持ってこられそうだったので、マグナスは逃げるように席を立った。すると、おかわりを準備しようとしていた少女が少し残念そうな表情を浮かべつつも指を上に上げた。

「それでしたら、この宿の屋上がいいですよ。眺めもいいですし、一応椅子もありますし。」

「じゃぁ、そうさせてもらうよ。おやすみね。」

「お休みなさい。」

少女に別れを告げ、マグナスはそそくさと屋上へ上がっていった――。


 屋上へのドアを開けると、そこは一面の星空。冷たい風が一気にマグナスの火照った体を冷やした。少女の言ったとおり、椅子が2つ、屋上に設けてあった。その一方に座り、彼は町を見渡した。キレイな月の光に護られるようにしてフェイヨンの町が照らされていた。静かで、虫の鳴き声が重奏を奏でるように聞こえた。

 しばらく夜の景色を眺めているうちに、マグナスはまたさっきの夢を思い出した。今まで母親の夢など見た事がなかったので、一種の戸惑いのようなものを感じているようだ。

「何で今になってこんな夢見るんだ…。」

そうして答えを見出せないままずっと考えていると、宿内へと繋がるドアが開く音がした。マグナスがぴくっとなってそちらを向くと、レーリンが優しく微笑んでいた。

「レーリン。」

彼女はマグナスの方へゆっくりと歩いて、隣にあった椅子に腰掛ける。

「宿屋の女の子に聞いたらここだって教えてもらったから。」

マグナスは少しの間、レーリンをじっと見つめていたが、また外の景色に顔を移した。レーリンも真似て外の景色を見る。

「キレイだね、フェイヨンの町。」

「そうだね。」

「あ、ほら、鈴虫が鳴いてる。…あ、コオロギも。」

「……」

「何か考えてるの?」

「まぁね。」

「何考えてたの?」

「なんで教えなきゃいけないんだよ。」

「だって…なんか辛そうだし・・・・・・私で良かったら相談に乗るよ?」

そうレーリンが言ってから、しばらくの間どちらも何も言わなかった。

「マグナス…良かった……」

一言だけ言ってそっぽを向いているマグナスに微笑みかけた。そして、マグナスの腕を掴むと、自分の手と彼の手をこすり合わせる。

「レ、レーリン?」

びっくりしてレーリンの顔を見ると、その顔には大粒の涙が浮かんでいた。

「起きたらマグナスいなくて、それで私、消えちゃったんじゃないかって……」

レーリンはか細い声で続けた。

「もう嫌なの…」

「え?」

マグナスが聞き返した。するとレーリンは彼の手をぎゅっと握った。

「もう…誰一人、私の前でいなくなってほしくないの…!」

そしてさらにマグナスの手のひらを強く握り締める。そうして彼女はマグナスの体温を感じずにはられなかったのだ。彼女の記憶――突然のロード・オブ・デスの襲来によって、一瞬にして全てを失ってしまった悲しい過去――マグナスはその話をノブナガがプロンテラでしていたのを思い出した。そして、自分もどこか強い共感を覚えた。マグナスは、レーリンがあまりに悲しい過去を持っているため、周りの人が急に消えてしまうことに異常に恐怖を感じるようになったのだとわかる。そして、それがさきほど会ったばかりの自分に対してもそうだという事がわかり、それに申し訳なさと深い安息間を覚えた。

「ごめん…」

レーリンは顔を振った。

「私こそごめんね。勝手に泣いたりしちゃって…」

マグナスは彼女の顔を見て、レーリンは彼の顔を見て、それぞれ微笑んだ。真夜中の月明かりが、夜のフェイヨンとともに、二人の見つめあう姿を照らす。

「俺な、さっき、母さんの夢見たんだ。」

ゆっくりと目線を夜の町並に戻し、マグナスは語り始めた。

「俺の母さんは俺が三歳の時に行方不明になっちゃったんだ。だから、義理のお母さんがいるんだけど……それで俺全然顔とかも覚えてなかった。だけど、今日夜の夢、って言っても夢だから、本物かはわからないけど、母さんの顔がはっきりとわかったんだ。俺が小さい頃の記憶が戻ってきたみたいに、突然わかるようになったんだよ。だから、なんでかなって考えてた。」

それを聞いてレーリンがぽんと手を打った。

「それは、たぶんリコリス様のおかげじゃないかな。」

「リコリス様の?」

「うん。これはもう伝説の中の話だから、本当かどうかはわからないけど、精霊の力を手に入れたリコリス様は死後の世界と現世を繋ぐ道を行き来できるようになって、戦いの犠牲者たちを蘇らせたって書いてあったのを読んだ気がする。だから、きっとお母さんの記憶をリコリス様が…」

「母さんが死んだみたいな言い方するなよ!」

マグナスが声を荒げた。レーリンはびっくりしたが、ごめんと一言言って前の穏やかな表情に戻った。

「そうね。きっとどこかで生きてるわ。」

しかし、マグナスは悲しい顔をすぐには緩めなかった――。


 二人はその後しばらく、外の景色を無言で眺めていた。そして、急にレーリンがマグナスの方を向いた。

「ねぇ、マグナス。あなたのいた世界ってどんなところだったの?」

「信じてもないくせに。」

「あら、私はあると思うなぁ、あなたの世界。」

その言葉にびっくりした様子で彼女を見つめた。

「なんだって?」

その反応が面白かったのか、レーリンはふふふっと声を出して笑った。

「だって、こんな広い宇宙の中で、世界がここだけって考えるほうがどうかしてるわ。」

「ロンとか、ノブナガさんはそうは思ってないみたいだけど…」

レーリンはまた笑った。

「そうね。ノブナガさんはともかく、ロンはぶっきら棒だから。思ってることを素直に表現できないのよ。本当は優しいナイーブな奴だから。」

それを聞いて、さっきの豪快な寝相を思い浮かべたマグナスはおかしくなった。

「って事は、ロンも信じてるってこと?」

「私はそう思うわ。」

それを聞いてマグナスは少し安心した。


 その後、マグナスは学校の話や、自分の家族の話、大好きな歴史の話をした。レーリンはそれを興味深そうに聞いている。中でも、むこうではリコリスが世界を作ったと言われている話をしたときは、向こうの世界とこっちの世界のどこかに接点があるのかもね、と言って興奮していた。
 それからまたしばらく時は流れ、気がつけば東の方向から出番を迎えた太陽がゆっくりと昇り始めている頃だった。町にも少し人の声がする。二人は結局夜通し話していたのだ。

「あら、もう朝ね。」

レーリンは黄金に輝く地平線上の太陽を見つめた。

「本当だ。」

マグナスもその光景に心を奪われた。

「キレイ……何かの宝石みたい。」

「そうだね。」

「"リコリスの旅"をすることで、私たちはこれからいろいろなものを見れる…そこはリコリス様に感謝しないとね。」

マグナスに微笑みかけるレーリン。そしてそのまま立ち上がると、大きく背伸びをした。

「さて。今日は第一の精霊様に会わなくちゃ。部屋に戻って日が完全に昇ったら町長のところへ聖地に入る許可をもらいましょ。」

そう言って、ドアのほうへゆっくりと歩いた。日の光を浴びたレーリンの姿を見て、マグナスは何とも言えない暖かな気持ちになった。

「レーリン。」

思わず大きな声で彼女を呼び止めた。彼女はくるりと振り返り、「なぁに?」と微笑んだ。数秒間の沈黙……そして、マグナスはハニカミながら口を開いた。

「俺のこと、信じてくれてありがとな。」

レーリンは笑顔で首を横に振った。そして二人は部屋へと戻っていった。朝の日の光が、フェイヨンの町と共に、二人の笑顔と後姿を照らした。その一瞬、マグナスの腰の短剣が輝く――。
2010-02-14 [ Sun ]
Ragnarok Memories ~遥かなるリコリスの旅~  

感想お待ちしております

・登場人物
マグナス…ゼクスター学校に通う青年。

ティーチ…ゼクスター学校でマグナスの同級生。マグナスをよくいじっている。孤児。

ダリア…ゼクスター学校でマグナスの同級生。マグナスに想いを寄せている内気な少女。孤児。


<主人公>
ロン…リコリスの旅を遂行する青年。故郷コンロンをロード・オブ・デスに焼かれた。レーリンの兄。

レーリン…リコリスの旅を遂行する少女。故郷コンロンをロード・オブ・デスに焼かれた。ロンの妹。

ハルニャン…フェイヨン一の弓使い。巡礼の地の指南役。おっとりとした性格。

ギン…女好きのホワイトスミス。男には厳しい。特製"ギンアイス"は絶品。

バーネット…盲目のアサシン。無口。



<グラストヘイム王国>
ケイセ…現グラストヘイム国王。またの名を"不死鳥のケイセ"。

カイバウアー…帝国最強の騎士"王の四剣"を纏める称号"マスター"。またの名を"魔神"。

ノブナガ…グラストヘイム帝国騎士団最強の剣士。"王の四剣"の一人。またの名を"神風のノブナガ"。

トラコ…"王の四剣"の一人。またの名を"氷神"。

リドカイン…"王の四剣"の一人。またの名を"雷神"。

フィズバッス…"王の四剣"の一人。またの名を"炎神"。現在行方不明。


<精霊たち>
リコリス…

月光花(ウォルヤファ)(inフェイヨンの洞窟)…

不死王オシリス(inピラミッド)…

オーク族長オーガニス(inオークダンジョン)…

魔法剣士ヘニョ(inゲフェンタワー)…

東湖城城主ウエポン(inアマツ東湖城)…

蟻の女王マヤー(inユグドラシルの幹)…


<ネオ・イージス>
長官…みなに長官と呼ばれるが、その正体は不明。

???…弓士の男。リーダー格。

イワンコフ…

モッチーニ…

ワサビーフ…



早見表:

小説Ragnarok Memories~プロローグ~第一章~
小説Ragnarok Memories~第二章~静寂のフェイヨン編①~
小説Ragnarok Memories~第二章~静寂のフェイヨン編②~
2010-02-14 [ Sun ]
Ragnarok Memories ~遥かなるリコリスの旅~     



~プロローグ~


 「この世界が、いつから存在するのか、そんなことは誰も知らない。リコリスという神が創ったと私の母親は言うが、本当にそうなのかはわからない。わからない…世界にはわからないことだらけ…だけど、変わらないこの世界は、私たちを優しく迎え入れてくれる。」

                                   著書~心理学者・ミディナル~


                                   ・・・

  

  ミドガルズ暦500年・・・今日もこのラグナロクという世界は平和に時を刻む。四大国家ルーンミッドガッツ・グラストヘイム・シュバルツバルト・オーク村は互いに同盟を結び、お互いを高めあった。それは、各大臣クラスの暇つぶしとして、国家のあり方を熱く語るほどであった。
 そんな時代、物語の始まりは唐突にやってくる。それは、ルーンミッドガッツ首都内にある小さな学校から・・・



第一章 :朝露のごとく

1.~警鐘~

 ここはルーンミッドガッツ王国首都・プロンテラ。王国最大の街であり、中央道に軒を連ねる露店の数は、地方からの人々にとって大きな刺激となるほど大量であった。あちこちで威勢のいいかけ声が飛び交い、商店街は活気に満ちあふれていた。王国大臣の中には、商業活動に規制のメスをいれるべきという者もいるが、国王が断固として認めず、今なおもここは自由経済圏として名をはせている。
 そんな街中から少し外れたほうに、プロンテラの古い木造の学校がある。中央道とはうってかわって静寂があたりを包み込んでいた。かすかな夏虫の声がとても大きく感じられる。子供の声もしない――そう、今は授業中なのだ。それは校内のとある教室でも同じであった。

「心理学者のミディナルはこのようにして、世界創造神話をリコリス神が創ったと考えておる。この意見は一般的じゃが、他の学者の中には、ビックバーンという宇宙の突然変異によってできたと考える者もおる。」

白ひげをたくさん蓄え、ミニグラスととんがり帽子をつけた先生が教卓で授業を行っている。よほどつまらないのか、生徒たちのほとんどが話を聞いておらず、友達とコソコソ話たり、教科書を顔の前においてばれないように寝たりしていた。


 そんな中、机の一番前で先生の話を真剣に聞いている子供がいた。青い髪を肩まで伸ばしたこの少年は、食い入るように先生の話を真剣に聞いている。

「お前さんたちの中でリコリス神の秘碑の呪文について知っている者はいるかのう?」

先生の質問に対し、すぐに大きく手を上げるその少年。

「はい、マグナス君。」

マグナスと呼ばれたその少年はゆっくりと立ち上がった。しかし、周りのみんなは数人を除いてあまり興味なさそうに各々の行動を続けている。

「”この世界に絶望の雨が降るとき、私の世界も終わりを告げる。鳴らせ 神々の楽器を… 歌え 神々の唄を…その時、絶望が崩れ行く…そして世界は再生される”です。」

得意な顔で言い切るマグナス。先生もにっこりと笑いかけた。

「そうじゃね、マグナス君。君はよく世界史を勉強しておるの。では次は…」

そう言い掛けた時、学校のチャイムが鳴った。とたんに生徒たちが席に向き直る。

「それでは、今日はここまでじゃ。明日までに教科書の128ページまで読んでくるように。終わり。」

先生がそういうと、生徒たちは一斉に教室の外へと駆け出した。昼食の時間なのだ。

「"この世界に絶望の雨が降るとき、私の世界も終わりを告げる。"」

マグナスの後ろの少年がからかうようにそう言った。彼は訝しげな目でその少年を睨んだ。

「ティーチ、バカにしてる?」

「滅相もない。マグナス大先生の貴重なお言葉を復唱しているだけでございます。」

これ以上相手にしても無駄だと思ったのか、一括するようにティーチを睨むと前に向き戻り、机の中から手作りサンドイッチの入ったバスケットを取り出した。それを見て、ティーチは再び嘲笑する。

「また、ママンの手作り弁当かい?いいねぇ、愛情がこもってて。俺たち孤児はみんな購買の学食だもんなぁ。」

「母さんまでバカにするなっ!!」

さっきまで静かだったマグナスがいきなり声を荒げて怒鳴った。殴りかかろうとするマグナスの攻撃をヒョイと避けながら、ティーチは愉快そうに教室の外に出て行く。小さく「義理のお母さんのくせに」と言ったのが聞こえたが、マグナスはそれを無視して席に着いた。

「あ、あの・・・」

そんなマグナスにビクビクしながらも赤い髪を肩まで伸ばした少女が近づいてきた。

「なんだよ、ダリア。」

その言い方にまださっきの熱がこもっていたので、またダリアはビクっと肩を震わせた。泣き出しそうだったが、マグナスはかまわずサンドイッチにかじりつく。俯きかげんに彼を見つめているダリア。

「あ、あの・・・マグナスくん。私・・・また購買でパン買うんだけど、小食だから・・・全部食べれないから・・・マグナスくんまた半分食べてくれないかなぁって思ったんだけど・・・」

彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめ、モジモジと前で両手を組んで指を忙しく動かしている。すると、マグナスの顔が急に明るくなった。

「おお!ほんとに?いいのか?!ならぜひお願いするよ。これじゃぁ正直足りないからね・・・」

それを聞いたダリアもパッと明るい顔になった。しかし、また顔を赤らめてうつむきかげんになる。

「あの・・・それで・・・マグナスくんが良かったら・・・ほんと、よかったらでいいんだけど・・・マグナスくんの隣で食べていいかなぁって思ったり・・・」

なるほど、彼女はマグナスにホの字のようだ。しかし、当人は全く気づいていない様子。

「ああ、いいよ。どうせ、俺の横なんていつもあいてっから。」

感激で、心躍るダリア。

「ありがとう!!早速買ってくるねっ!!」

大きな声でそう言って、走って教室を後にした。マグナスは何か彼女にいい事をしたのかわからなかったが少し嬉しくなった。


 こうして気づけば、マグナスの教室には誰もいなくなっていた。けれども、彼はそれを気にする素振りも見せず、一人黙々とサンドイッチを口に運んでいた。夏蝉の泣き声が一層大きく感じられた。とその時、突然、マグナスの教室の前の扉がギィっと開いた。それに気づいて目をやると、真夏だというのに全身を黒いマントで覆い、顔をマフラーとターバンで隠している者が立っていた。男か女か、いや・・・それ以前に人間かどうかもわからない。

「だ、誰だ?!」

明らかに学校の生徒ではないと思ったマグナスは叫ぼうと思った。しかし、なぜか声が出なかった。

「・・・ス・・・・・テ・・・」

その者はマグナスに懇願するように小さな小さな声で何かを伝えようとしている。しかし、マグナスにはそれがよく聞き取れない。

「なに?」

すると、その者は消えたかと思うと耳元まで一瞬でやってきた。

「タスケテ・・・」

驚いたマグナスはサンドイッチを放り投げ、その場にしりもちをついてしまった。今度はその者も彼に覆いかぶさるように静かに横になる。そして、完全に彼マントで包み込んでしまった。

「タスケテ・・・セカイガ・・・モトメテル・・・」

「うわああああああ!!」

一瞬だけその者の目が見えた。見た目とは裏腹に優しい、暖かいコバルトブルーの目をしていた。しかし、その目は涙で覆われて、必死に助けを求めている。





   そして、マグナスは静かに意識を失った。後には、バスケットと、マグナスが放り投げた食べかけのサンドイッチが残っただけだった。


 暑い暑い夏の正午・・・・・・マグナスは謎の人物と一緒にこの世界から姿を消した・・・






2.~リコリスの旅~


「う・・・」 

 次にマグナスが目覚めたのは冷たい礼拝堂の中だった。今は使われていないのか、所々が朽ち果てていて、かび臭い。生気すら感じられない。マグナスはそんな礼拝堂の冷たい冷たいタイルの上で横たわっていた。しかし、誰がかけたのか、体の上に小さくではあるが、ちょこんと布があった。

「ここは・・・一体・・・・・・」

しばらく記憶の整理に時間がかかった。

(俺は確か・・・マントの奴にいきなり覆いかぶさられて・・・)

「そうだっ!!マントの奴!」

勢いよく立ち上がる。しかし、急に眩暈がしてすぐそのまましりもちをついた。まだ完全に体が起きていないようだ。

「ははは、あまり無理をするなよ。」

突然彼の後ろから声がした。驚いて振り向くと、そこには赤いマントの、体をメイルなどで厳重に装備した男がいた。蓄えられた銀色の顎鬚、銀髪で覆われた頭、腰帯には剣の鞘がついている。

「誰だっ?!」

一歩下がって相手に警戒するマグナス。しかし、男は両手を上にあげ、襲う意思がないことを明らかにした。

「まぁまぁ、そんなに怖がりなさんなって。腹減ってんじゃないかと思ってね、その辺でリンゴを取ってきてやったんだよ。」

しかし、マグナスは一向に警戒を緩める様子がない。それを見てその男が「やれやれ」と深くため息をつくと、リンゴの入っている袋を彼のところへ投げた。

「わかったわかった。俺はこれ以上近づかないから、それ食いなさいよ。」
「お腹なんかすいてない!!ここはどこだ?!」

その質問に男は驚いた。

「ここはどこって・・・君はここがプロンテラだと知ってきたんじゃないのか?」

今度はマグナスが驚く。

「プロンテラだって?!ここが?!」

よく見回してみると、なるほど、確かにここはプロンテラにある礼拝堂に良く似ている。しかし、あそこはいつもきれいで、こんなに廃れてはいない。

「君はどこから来たんだね?」

男はマグナスにこれ以上警戒をさせないように優しく尋ねた。

「俺は・・・プロンテラの"ゼクスター学校"から。」

再び驚く男。しかし、すぐにニッコリと笑った。

「そうか。君はどこかで頭を打ったようだね。それにここはプロンテラだ。大昔の亡霊の記憶が君の中に溶け込んでいるのかもしれない。一番近い街・・・そうだなぁ。フェイヨンまで送ってあげるからそこでゆっくりと休みなさい。」

何がなんだかわからないマグナス。しかし、その時、礼拝堂の外でガシャンという大きな音がした。

「な、なに?!」

「くっ・・・レイドリックとカースたちか・・・君・・・えっと、名前は・・・」

「マグナス。」

その名前を聞き、少しまた驚いたような顔をしたがそれはすぐに消えた。

「そうか。おじさんの名前はノブナガ。じゃぁマグナス。ついておいで。」

そういうと、急いで音のする方へと向かった。彼もそれに続く。




「プロンテラ騎士団ハ・・・王ノ帰還ニ備えルのダ!!侵入者にハ死ヲ!」

 外には無数の鎧を着た騎士がいた。いや…正確には鎧がいたのだ。彼らは実態がなく、鎧が空中に浮いているように見えるが、しっかりと剣や弓を携えている。そして、その中に二人の人間と、一人の骸骨がいた。骸骨の方は顔をヘルムで覆い、体に虹色に輝くマントを纏っている。さきほど叫んでいたのはこいつだ。人間の方は、一人は白いスカートに小さな肩当をした青髪の少女、もう一人は、ミンクのコートを纏った全体的に露出度の高い金逆毛の男である。男の方は少し血を流していた。

「はあはあ・・・どけっ!!レイドリック共!!」

殴りかかろうとする男を隣の少女がとめる。

「ロン、やめて!!あなたでもこの数じゃ勝てないわ。」

「だけどレーリン・・・このままじゃここで死んじまうんだぜ?」

「何か方法があるわ。きっと・・・リコリス様の加護があるもの・・・・・・ねぇあなたたち。私たちはリコリスの旅をしているの。あなたたちの領地を荒らしに来たわけじゃないの。」

しかし、顔のないレイドリックたちはじりじりと滲みよった。どうやら聞く耳を持たないようだ。彼らは剣を上げた。レーリンは目を瞑ると体を反らせ、ロンは彼女の上から守るように覆いかぶさった。とその時・・・

「スパイラルピアース!!」

掛け声と同時に巨大な槍が踊る。高速に動かされたその槍は真空の渦を生み、そこにいたレイドリックたちはその渦に引き込まれバラバラになった。

「?!」

こうしてノブナガは鳥のような馬に跨り両手に黄金色に光る槍と盾を持ち、颯爽と現れた。もちろん、その鳥の上にはマグナスもいる。恐怖で死にそうな顔をしてはいるが。

「貴様・・・私ノかワいイ部下ヲ・・・!!」

他のレイドリックたちも今の攻撃に精神的なダメージを受けたのか、徐々に後退していった。ただ一人、骸骨の亡霊はその場で怒りに燃えている。

「プロンテラ騎士団ともあろうお方たちが、二人のか弱い人間を相手にこんな事するのはどうかと思いましてね。ああ、君たち、大丈夫かい?」

ノブナガは馬から2人を見下ろすと笑顔で手を差し伸べた。

「ありがとうございますっ!!」

お礼を言うロン。しかし、その時彼の顔を見たロンが驚きに支配された。

「あ、あなたはまさかっ!」

「ん?なんだ?おじさんのこと知ってるのかい?」

ノブナガはまんざらでもなさそうな顔をしながら尋ねた。

「"神風のノブナガ"様では?!」

「おお、おじさんのこと知ってるのかぁ。」

「知ってるも何も、現グラストヘイム王"不死鳥のケイセ"様に告ぐ、王国最強騎士様ではないですか!!」

「うむ。真にそうである。」

少し得意そうに胸を張った後、マグナスに小声で「普通、おじさん見たらこういう反応なんだけどなぁ」と言いながら苦笑した。

「それより、追わなくていいんですか!?あの化け物っ!!」

汗をダラダラと垂らしながらノブナガのお腹にしがみ付くマグナス。彼の言うとおり、亡霊たちは相手が悪いと思ったのか、おずおずと退散を始めた。

「ああ、いいんだよ。戦う意思の無い者を追う必要はあるまい。それより・・・」

マグナスの頭を優しくなでた後、再び2人の方に向き直る。

「君たちは、もしや"リコリスの旅"を遂行する者たちかね?」

レーリンはまださっきの恐怖に苛まれているので、ロンが代わりに代弁した。その時、マグナスは妙な頭痛に襲われた。しかし、すぐにそれは消えた。

「そうです、ノブナガ様。俺たちは故郷コンロンをロード・オブ・デスに破壊され、生き残った二人で"リコリスの旅"へ出向かったのです。」

それを聞いたノブナガは暗い顔になった。

「そうか・・・君たちは・・・神仙の島・コンロンの生き残りなんだね。済まなかった。我々がついた時にはもう生存者は・・・・・・」

ロンが大きく首を振って、反対する。

「いいえ。今、イズルードやアユタヤを始めとする色々な街が破壊されてるのに、俺たちだけ被害者面はしてられません。俺たちはきっと"リコリスの旅"を成功させてみせます!!」

「ちょっと待ってよ!ロード・オブ・デス?ユミルの旅?それって何なのさ?」

会話に割って入るようにマグナスが両手を広げた。

 ノブナガとロンは驚いた。しかし、ノブナガはさっきの事を思い出し、また優しく微笑んだ。

「ああ、君は本当に何もわからなくなってしまったのか。」

「違う!!俺は黒いマントの奴にこのわけのわかんない連れてこられたんだ!」

奇妙なモノをみるかのようなロンの瞳。ノブナガは彼の頭を撫でながら提案した。

「まぁ、ここは少々危険だ。隣町のフェイヨンまで行こう。おじさんが送ってってあげるから。マグナスもおいで。ゆっくり寝れば君の記憶も取り戻せるだろう。」

彼は何かスッキリしない気持ちがしたが、まだビクビクしているレーリンをつれて、三人はフェイヨンへと向かっていった。
2010-02-09 [ Tue ]
02096.jpg

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昨日のたまり場のモンク率の高さは異常。一億の気孔が舞うその姿はげに美しきかな。こんにちは、黒ひげです。

いやはや、早いものでイワさんも70になりましたよ。

もうね、スリッパに必要なモノは全て借りものです……チェインに盾にエンジニアにピッキに…みんな、あざす!





 さて、昨日はたまり場にちょいとお客さんが来てましたよ。予期せぬ訪問者に一同慌てふためきましたが、私自身嬉しいような悲しいような複雑な気持ちでありました。





















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お客さんってレベルじゃねーぞ!

シルフィさんが一本枝折ったのかな?そしたらメタタァ!って出てきてたまり場にいた全員が即死。しかし、そこは腐ってもDSギルド。ろんふぅ師匠がICHIGEKIで殺っちまいました。

かくしてたまり場の平和は保たれたのである。たまり場警備員であるバーネット様がいたら、こんな事にはならなかっただろうが、彼は今、何処で旅をしているのだろうか。




 というわけで、最近はスリッパばっかです。1確になってテンションUP!しかし、スリッパと格闘する私には常に、この問題が付きまとうのであった。それは……








睡魔(RO的な意味で)

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いや~こうしてみると、色々な寝かたがありますね。




でも、一番のお気に入りはコレ↓
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睡魔と物欲との間で揺れ動く人間を見事に描いた一枚。





 ナスは昨日、レーリンは今日、課金切れだそう。ちょっとさびしくなりますが、DSギルド、みんなで盛り上げていきましょう。

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(ナスとひげ/たまり場にて)
2010-02-06 [ Sat ]
スリッパデビューしました!1確じゃないけど…

スリッパ様の大自然の恵みを2個も頂けば黒字確定なので、SPなくなったら宿→ポタで戻る作業を続けて結構モチベーションは保ちやすい…が、いつまで続くことやら……スリッパチェイン高すぎるんすけど!チマチマとネイチャとかで稼いでいきますよ


↑zZZ
2010-02-05 [ Fri ]
イルフェボーオウジョウドゥイ!こんにちは、黒ひげです。

テストの山場である木曜が終わり、残すテストは@1つ。そしてレポートが一枚。だいぶ気持ち的にも楽になったので一週間ぶりにRO起動。




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いつ見ても人が多いな


初めての人とかも結構いて、びっくりしました。私のギルドへようこそ



そして、遊びに出かけたるは……


氷D

教授様のおかげで阿修羅打ち放題でした。

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いやー、一撃で倒せるっていいですね!WIZでは絶対に見れないダメージにすっかり魅了されました。

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忍者初めて一緒に狩り行ったけど、(あ!ナスノスケがいたか)すごい攻撃が多彩でビックリしましたヽ(゚∀゚)ノナスノスケは手裏剣とか投げてたし、にんにんさんは忍術?で色々状態異常起こしたり、フィールド展開したりとちょっと楽しそうだなーと。



 
 一時間ぐらい阿修羅を満喫して帰宅する。ろんふぅ師匠に阿修羅サーフィンなるものを見せてもらった。

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すげえw


俺もすぐさま( ´_ゝ`)b

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この構えは…!




かめはめ派!

ちょっとモンク頑張ろうと思うよヽ(゚∀゚)ノ
2010-02-03 [ Wed ]
目玉吹き飛ぶわ



おはようございます、世界のヒゲクロチャンこと黒ひげです。WIZが転生しても、装備品を買うお金がない事が発覚し、急遽作られたお金稼ぎ用モンクを作ろうと決意(イワンコフ)。モンキュでモキュモキュと狼を狩る日々が続く。装備品も借りものなので強い強い+。:.゚ヽ('ω`)ノ゚.:。+

だが…これでいいのか?
ブロガーとして、毎日ネタのない単純作業の繰り返しでいいのか?

否。



そしてヴァタシはマップ隣の火山に行ってひと泡吹かせてやろうと、無謀なことを考え始めたその時、神の声が



「PDおいで!」


あの日ほど笑った夜はない、あの日ほど泣いた夜も、酒を飲んだ夜もない…

というわけでパパスとママス(レーリンとアケチ君)とマイブラザー(ナス)と共にPDへ!

さて、私の雄姿のほんの一部をお見せしよう。













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おい、クリティカル!おい!邪魔だよ!
俺の雄姿が映ってないじゃない…

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……


02024.jpg

貴様ァアアアアアアアアア!

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チーン( ^ω^)


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ロクなSSがなかった
もういいよ…後ろ姿で。

久しぶりにね、楽しかったよヽ(゚∀゚)ノやはり俺にはPTが(ry



リフレッシュして、寿司にタンポポを乗せる作業に戻る。

しかし、ここでついに我慢の限界を迎えた…!


   /\___/ヽ   ヽ
   /    ::::::::::::::::\ つ
  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::| わ
  |  、_(o)_,:  _(o)_, :::|ぁぁ
.   |    ::<      .::|あぁ
   \  /( [三] )ヽ ::/ああ
   /`ー‐--‐‐―´\ぁあ



 もうめんどいからクエで上げよう…ということで、ゲジの'`ィ∩(´∀` )アコトゥスと一緒にクエクエしました。



 順調にこなし、もう50は目前。いやー、クエは偉大ですね、ホントに。
ゲジに手伝ってもらってサクっと50まであげました。あざす!
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さて、モンクになってくるぜ……


02028.jpg

マラソン中……






そして、すべての試練を終え、ヴァタシはモンクになることとなった。長老からありがたい言葉をのたまう。







02027.jpg


終わんのかよ!一本とられたよ!


門出のモンクに対する軽いジャブですね、はい


狼オンラインでついにねんがんの…

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つええええええええええええ!

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2010-02

プロフィール

黒ひげ

Author:黒ひげ
RagnarokOnline saraサーバーで活動中。(復帰)
主に、WIZについて考察していきます。初心者からどうやって成り上がって行くか…乞うご期待!

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